松永敦ストーリー vol.5

声と心と音楽と。
~ 私がパワーボイスに出会うまで ~

自分の人生をこんなふうに俯瞰してさらっと文章に書いてしまうと、私がいたってのんきに順風満帆に人生をやってきた人間だと勘違いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のところは全然そうではありません。

いまにして思えば若気の至りのようなところも大いにありますが、当時、若かった自分にとっては人生を揺るがすような大きなできごとにぶつかって悩みぬいた日々もありました。また大人になって家庭を持ってからも常に悩みは尽きませんでしたし、それがもとで医者の身でありながら大病を患ったこともありました。
悪いことは重なる、というのは本当で、自分のことで悩んでいるあいだに親がガンになって亡くなったりと、自分にとってつらい日々が続いた時期もありました。
でも一方で、どんなにつらいときにも自分を支えてくれたものがありました。
それが音楽です。

もし私の人生に音楽がなければ、きっと医者にもなっていなければ、どうなっていたかもわかりません。
人生で最もつらかった時期、わたしはいつも音楽の天使に助けてもらっていました。
とくに、自分の声を使って奏でる、音楽という天使に。

これは過ぎてしまったいまだから言えることかもしれませんが、実は悩める日々というのはそれほど悪いものでも、価値のないものでもないのかもしれません。
ひとつはっきり言えるのは、人が生来好きなことのなかにはたぶん、その人の根源的な生きる喜びが隠されているんじゃないかということです。

さみしまぎれに一人ぽっちでピアノを叩いて歌っていた少年時代から、悩み多き大人になるまで、好きで奏でた様々な音楽のなかに、私はたくさんの宝物を発見しました。 声と心はいつも連動し、音楽はそこに力を与えていました。 悲しいときは悲しいように、喜びにあふれているときには喜びにあふれた歌となって。 そこに私のパワーボイスのルーツがあります。 声の出しかたひとつで人は元気のない自分を元気にすることもできるし、元気のない誰かを瞬時に笑顔にすることもできます。 声と心と音楽と。そしてパワーボイスは、医学・医療と両輪となって、いまではなくてはならない私のライフワークになっています。