「今一度、腹から出す声のコントロール!」1.声の出るしくみ / ベルヌーイ効果

パワーボイスセミナー 第77回
「今一度、腹から出す声のコントロール!」

~ 医学的腹式呼吸と自分の感情の関係をマスターしよう ~

このパワーボイスセミナーが始まってもう8年目になります。
当初から医学的腹式呼吸のことは何度もお伝えしてきました。
しかし、この内容も少しずつ深まり、肉体というものが感情との関係にコントロールされることが
どんどん明確になってきました。つまり腹式呼吸というものも感情の上手な使い方で、さらに楽に
できるようになるという事です。では、どんな感情をどのように表現するのが良いのでしょうか?
今年はみなさん、医学的腹式呼吸の完全マスターに挑戦しましょう。
これができるようになるだけで、歌の世界がぐっと身近なものになり、
自分の世界を歌で表現しやすくなります。
パワーボイスファンには必聴のセミナーです!

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今日のテーマは、「今一度、腹から出す声のコントロール!」。
よく声はお腹から出しましょうっていいます。
でも「あー」っていうとき、わたし、ここから声でてませんよねえ?(笑)
口からでますよね?

お声というのは、どういうふうにしてできているかっていいますと、大体の
方がご存知だと思うんですけれども、お喉の声帯という場所、そこからでて
くるんですね。
でも、声帯もだた声帯ってぽん!とあったんじゃ声にならない。

声というのは、まあ、音。
「あーー」と言うと、この「あーー」っていうのは空気を震わせて振動をうけて、
この「あーー」っていうのがみなさんのお耳に伝わってなんか声が聞こえてる音
がしてるなっていうんですけども、それはまずは空気が肺から出てきて、それが
喉を震わせて、喉の中にある『声帯』という粘膜を震わせて、それが上手に揺れる
ことで、音となってお口からぽん!と出てくるわけです。
お鼻からも出てたりします。

それで、まずお喉がどこにあるのか、それをみんなで確認したいと思います。
お喉ね、ここでっぱりあります、男の人はね。
これ、よくアダムズアップルとか喉ぼとけなんて言います。
で、女性も多少は出てると思うんですけど、ここを手で触っていただいて、
唾のんでもらえますか?
どない? 動きへん?

動きました。

ねえ。コクンって動きます。
唾を飲んだときにどういうふうに動くか、もういちど確認してみましょう。
唾のみます。

どうでしょう?
どんなふうに動きます?

上に上がります。

そうですね。
お喉って、『喉頭』という臓器なんです。
で、よく『喉』『喉』と言います。
うちなんかも耳鼻咽喉科ですから、耳鼻咽喉、って言った場合ね、
咽頭と喉頭ってふたつあるんですよ。
これどっちも喉なんですね。
あれえ? って思うでしょ。
咽頭と喉頭。
「あーん」って口あけます。
扁桃腺。正式名称は扁桃っていいますけれども。
その扁桃があったりとか、喉の突き当りがあったりとか。
ちょっと風邪ひいて喉が痛いときなんか真っ赤になってたり、白いブツブツが
付いてたりするようなあたり。
あれぜんぶ実は咽頭、って言うんです。
これ咽頭。ガラガラガラ・・・ってうがいしてお水がちょっと当たるような場所、
これぜんぶ咽頭です。

今日なんか鼻の裏のところがヒリヒリしてるねん。
これは裏咽頭とか上咽頭なんて言います。
これも咽頭なんです。

じゃ、喉頭は? っていうと、今まさにみなさんに手で触っていただいて唾を
ゴックンって飲んでいただいたときに動いたやつ。
動くんですよ、喉頭って。
首の中でゴックンって。
これが喉頭なんです。
これが今日わたしたちが勉強しようっていうネタなんですね。

で、喉頭の中に声帯という粘膜があります。
でも、どうして喉頭ってそんなふうに動いてるの? って。
何故か。
これ動かないとエライことが起きる。
何が起きるのかっていうと物が飲みこめません。

喉頭というのはですね、まず何をしてるものかっていうと、そこの中に空気が
入ってきます。
絵で描くとこんな感じです。
人の顔、半分に割ったところだなーっていうの、わかりますよね?
このお鼻から息が入ってきます。

じゃあ、ちょっと息を入れてみましょう。
ハイ、空気、ひゅーーーんって入ってきます。
空気というのは実はお喉のところの前側に入っていきます。
で、ここから肺に行くんですよ。
肺。
こんな風にして空気入ってきます。
だからここのことを『気管』って言います。
空気の通る管、気管。

で、その途中、この喉ぼとけの真後ろに、声帯があります。
ここ、このあたりです。
あれ? じゃ、その後ろは何?
これなんだと思いますか?

食道。

そうです!
こっちはごはん食べるところですね。
いまは、ごはんのことはちょっとだけおいときます。

空気が通るときにはこっちに行くんですが、ここにフタがあるんです。
これ、喉のフタなんで『喉頭蓋』っていいます。
どうしてこんなフタがあるの?のべつまくなし人ってモノ食べてません。
ジュースはお茶も飲んでません。
だけれども、もしガンガン飲んだときに、この後ろのほうの食堂に食べものが
落ちていくんですけれども、ところがもし前の気管のほうにごはんが入ったら
どうなると思います?
むせるよね?
エライめにあいます。
こんなところにごはんがどんどん入ってったらどうなるのか。
エホンエホンしちゃいます。
若い人はいいです。
でも70も後半くらいになってきますと、実はゴホゴホってよくやってはる人
見かけるでしょ?
70過ぎてくるとなんでそんなにゴホゴホやるのかっていうと、人間ほうって
おいても鼻水とか唾液っていっぱい出てくるの。
その鼻水とか唾液いうのはなんと、ぜーんぶこの食道の中に落ちていくわけですよ。

鼻水っていったら1日どれくらい出るか知ってはります?
鼻水だけでですよ。
鼻水1日2リットル出ます。
鼻水だけで2リットル出ます。
唾液だとか、その鼻水だとか、ありとあらゆる粘液っていったらこの目、お鼻を
覆う成分っていうのはすごく多いんですよ。それがぜーんぶ垂れ込んでるのに、
もしもそのときに粘液がこっちの気管のほうに入ってきたらどうなるのか。
『誤嚥性肺炎』っていう、肺炎を起こしちゃいます。
それで肺からばい菌が出てきちゃったりするような状態になると、知らない間に
熱が出る。なんか知らへんけど、おじぃちゃん年中コンコンやってる。あっと
気がついたら次の日、起きてけえへんみたいなね。
そんな状態になるわけです。

だから、お喉になんでもかんでもやたらめったらモノが入ったら困るから、この
『喉頭蓋』というやつがあって、ふだんはフタしてるんです。
ところが深呼吸するとき、お声出すとき、喉頭蓋はちょっとうっすら開きます。
ごはんを食べたりするとき、もの飲んだりするとき、喉頭蓋はペタッと閉じちゃいます。
だからモノ食べたり飲みながらしゃべったり歌えないでしょ?
ゲボゲボゲボ・・・ってこんなんなりますよね。
そりゃ無理な話です。

だけれども息を吸ったり吐いたり、声をだしたりしてるときは喉頭蓋はちょっと
開いてるんです。
それで声帯が揺れる。

さあ、声帯をこの紙2枚で表したいと思います。
これちょっと2枚持ってもらっていいです?
それでペチャってつけといてください。
ボールペンみたいなカタイものがあります。
これでギューッと通そうとすると、通ったときにはこの紙は離れますよね。
これもしベチャってくっついて隙間も何もないっていってもボールペンが
ひゅーんときたら離れるじゃないですか。

じゃあ、空気がたくさんきたらどうなるのか?
やっぱり空気がきたら瞬間、離れるんです。
ところが、いったん離れるんですけど、これが空気の面白いところで、空気が
ひゅっと出てっても空気が出続けてたらまたくっつくんです。
何度もこんなふうに広がったりペタペタするんですよ。
フーッ! ほら。こんな感じ。
なんでこんな音するのん? っていったら、ぷ!と吹いた瞬間にひゅーんって
ひろがるんやけどまたそれがペチャッって寄る。
これ、物理学でですね、『ベルヌーイの効果』って名前が付いてるんです。
これなんなの? っていうと、ヨットとかね、翼、こういう形したものに前から
風とか当たりますと、これ、ひょろ~んってひっくり返るんじゃなくて、
上のほうにぎゅいーんって上がるっていう、そういうのがあるんですね。
これがあるから飛行機って飛べるのよ。
思えへん?
前から向かい風あるのにブイーンって飛んでてベチャ!って落ちたら飛行機
地面にまっさかさまいう感じでしょ。
でも、ひゅーんって浮かび上がれる。

あとヨットっていうのは帆掛け船じゃないので、前から空気きてるのに前に
進んでいく。なんでか、っていうと、それもベルヌーイの効果ってのが働いて
それで動くんですね。

それと同じで、この声帯というのもベルヌーイ効果っていうのが効いて、
こうやって音が出ます。

たとえば、練習のし過ぎで『結節』っていうのができます。
ポリープいうのができます。
さあ、ポリープの代わり作ってみましょう。
どうすんの?
でっぱり作ってみます。
片っぽの声帯にでっぱり作ってみました。
これ合わせて音だしてみると、、、ほら。出にくうなる。
でしょ?
これがポリープ、手術してなくします。
きれいになったとしましょう。
そうすると、また音が出ます。

・・・っていうふうに(声帯の)ちょっとしたでっぱりでベルヌーイ効果の
効果が消えちゃうんです。
それが、ポリープを作ってしまったときのガサガサ声の原因なんです。
こんなね、ポリープとか結節とか作りたくないです。
そのためにはどうしたらいいのかっていうと、いまから話をする
『医学的腹式呼吸』というやつ。
それをきっちりやっていただくことで、どんどん声を出すのがラクになってきます。

さあ、まあそういうことで、まずわかっていただきたかったのは、喉っていうのは
首の中でぐんぐん動いてる臓器なんです。喉頭、っていうね。
このぐんぐん動いてる臓器なんですけれども、この臓器、ものを食べたり飲んだり
するときには喉頭蓋というフタが閉まっちゃう。
でも息を吸ったり声をだすときには「このフタが開いて、そこから空気が入ってくる
ので声帯が上手にベルヌーイ効果で揺れて音を出してくれる。
その音を、わたしたちはただ単に出してるわけじゃないです。

わたしのいまの声、「みなさん、こんにちわー」って言ってるこの声。
もしもわたしの頭をポコンってはずして首切ってここの声帯から出てる声だけで
発声したらどんな音になるか。
ンーンーンー・・・ってこんなブザーみたいな音がします。