「ボイスチェック、ソングチェック」 Part 10 / 1.声を性格づけている要素

パワーボイスセミナー 第89回

「ボイスチェック、ソングチェック」 Part 10

野球選手にコーチが必要なように歌手にもコーチは必要です。
今回は歌うための筋肉の動かし方をチェックします。
腹式呼吸時のおなかの筋肉や横隔膜をどのように動かすのか、
肩を上げないように歌うにはどうすればよいか?
など喉をつぶさないようにして声を出す方法をお伝えします。

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人間っていうのはほんとうに、なんていうのかなあ、、、
才能、っていうのがあるだとか、ないだとか、よくいわれます。
で、その才能のあるなしということについてなんですけれども、
「あの人は声がすごく高いから」とか、「大きな声が出るから」とか、
えー、それから身長が高いからとか低いからとか、太っているとか痩せてる、
いろんなことについて、特に人前に立って何か物事をするときっていうのは
そういうようなことを言われることがあります。

んー、やっぱり、かっこいいお父さんお母さんからはかっこいいお子さんが
生まれるだろう、賢いお父さんお母さんからは賢いお子さんが生まれるだろうと、
そのようなことでけっこう子ども、ま、みんな親がいるわけですから自分たち
というのはですね、親の関係性についてなんやかやと言われてしまうわけなんですね。

で、たしかにその親からの影響っていうのは大きいです。
えー、日本人から生まれた子どもは大体、日本人です。
そこに白人だとか黒人の血が急にはいってくるってことはまぁ、ないわけですね。
ですから日本人で100メートル10秒切る、ということはすごく難しいことですし、
また、泳ぎはやはり何故か不思議なことに黒人の方ってちょっと苦手な方が多いんです
けれども、泳ぐのはアジア人だとか白人が得意だったり、ということがあったりします。

また、物事を考える、その考え方にしても、表現形にしても、やっぱりそれぞれの
民族性とか、種族性とかが出てきたりもするんですね。
それはDNAレベルの問題なんですね。

ところが、こと声を出す、ということではどのような民族性があるのかといいますと、
やっぱり黒人の方の声というのは、厚みがある。
何故か響きが深いような感じがする、っていうふうにおっしゃる方も多いんですけれども、
それはやはり黒人の方の筋肉というのが弾力性のある筋肉、そういう赤筋(せききん)、
赤い筋肉といいますけれども、そういう筋肉が多い。
で、舌の筋肉とか、ほっぺの筋肉もじゃっかん分厚い。というようなこと。
そういうようなことから黒人独特の甘くって深みのある声、なんかが出しやすいって
いうのは、もうどうしてもしかたがないところなんですね。

で、じゃあ、片やアジア人ですとか、それから白人はどうなるのかというと、もう少し
筋肉は薄くなってくるんですけれども、すっきりした声とか、透明感があるとか、
それからまた逆にキレがいいとか、まあ、いろんな表現はあるんですけれども、
そういうような声をつくっていくことができやすい、
というふうにいわれたりしています。

で、そういうDNAレベルにおいての親からいただいた、こういう遺伝形式ですね、
そこから出てくる声というのもたしかにあるんですが、それ以上にわたしたちというのは
いろんなことで考え方とか行動様式というのを、まわりの環境から影響をうけてるって
いうのが非常にあります。

まず、その環境っていうとどういう環境かというと、当然ですけれどもわたしたち関西に
いま住んでるんですね。
で、大阪に住んでて大阪弁、関西弁を話してるとですね、どうしても挨拶ひとつとっても
「ああ、どないしてんの? こんちは! 儲かってまっか?」
「ああ、ぼちぼち」
みたいなことで表現されるような、そういう大阪弁的な発想と、そういうイントネーション、
言葉になるんですけど、これがまた江戸弁になるとまた別ですし、東京弁になりますともう
ちょっと本来あった標準語にすこし東北がかった音が乗ってくるのが現代東京弁だったり
するってことが非常に多くなります。

で、それはまあ、その環境だけによるんですけれども、ところが環境の中でも最もパワフルな
環境ってのはやはり、その人が生まれ育った「家」ってやつなんですね。
その家のみんなが朗らかで和気あいあいとしてるとか、にこやかだったり、じゃっかんこう
ざっくばらんな人が多いと、やっぱり喋り方ってのはなんかにこにこするっていうか、
ワイワイっていうか www
っていうふうな、少し勢いがあるけれども、ちょっとややもするとガチャガチャした声になる。
で、また逆に大人しめの、静かな人がたくさんおいでになるところのおうちだと、ま、口数も
少なくなりますけれども、喋っても「はぁ、はぁ、はい。。。」みたいな感じでボソボソ喋る
ことが多くなってしまったりもするわけですね。

それが、じゃあ、もしボソボソ喋る人がカンツォーネを歌わされたら、どんななるんやろ?
それからまた逆に、ほんとに大阪の、南大阪あたりのちょっと舌が、関東弁のべらんめえじゃ
ないですねえ、、、大阪の紀州弁みたいな巻き舌の人がナレーションをすることになったら
どうなるのかな?! みたいな。

あの、よく日本のお笑いの会社なんかである吉本さんの所属芸人さんたちは、そういうような
大阪弁を喋られる方も多いのかもしれませんけれども、ほんとにそれは楽しさや、喜ばしさ、
もしくは静けさ、いろんなものが入ってて面白さを醸し出します。

なのですけれども、そこでやはり、じゃあ、それをもしオペラにした場合、カンツォ―ネに
した場合、それからまた日本全国の方に聞いていただくナレーションにした場合、やっぱり
それに一番ぴったりくるっていう音があるかなと思うんですね。

これがたとえばナレーションにしましても、もし宮沢賢治のことを何かお話しするナレーション
になれば、やはりその東北方言がちょっと混ざってきたようなナレーションのほうがすごく心が
こもることもあると思うんですね。

そういうわけで意外とわたしたちは、ひとつの言葉で歌うたうにも、また、ひとつの言葉で
お喋りをするにもかなりDNA以上にその方の生まれ育った地方の文化ですとか、その方の
育ったおうちの文化の影響をうけてるってのがあります。

ところがね、生まれ育ってまわりがみんなそんな感じだと、大きくなってから友達に
「それちょっと変なんちゃう?」とか、「それどうなの?」とかいろいろ言われたとしても
「えっ?」って言って、なかなかすぐにわからないことがすごく多いんですね。

で、そういったときにやはりトレーナーと申しますか、まあ横でそういうものにある程度
造形の深い人間が聞いてくれてて、それに対してなんやかやといろいろ言ってもらえる、
っていうのが役に立つときと、逆に変にやりすぎると逆の効果で役に立たなくなってしまう
ときもありますから、わたしこの『ボイスチェック、ソングチェック』のときは非常に
気を遣うんですけれども、でもそれは演じ手の方々の感じるところ、思うところと一緒に
バランスをとらせてもらいながらやっていこうかしらと思います。