「ボイスチェック、ソングチェック」Part 9 /4.神名書(カンナフミ)奏上

ちょっといっぺんやってみていただけます?
どうぞ、こちらで。
これじゃあ、いちおう暗譜していらっしゃるんですか?

  はい。

よろしくお願いしまーす。

  
  Cさん、神名書(カンナフミ)を奏上する
 
 こんな感じで舞台では3回繰り返す、まあ、1回ずつ
 半音上がっていくみたいな感じなんですけど、、、

はい、で、それでね、ご自身の中でこれを、、、
あの、、、これは詠う、というんですか?
それとも挙げる、というんですか?

  奏上する、ですね。

では、ご自身のこの奏上法について、どこらへんが不満足でらっしゃいます?

  あの、もうすでにCDは何枚か出してるんですけど、あのー、たとえば
  リハーサルで何回かやってしまうと、もうほんとに本番、レコーディング!
  というときにはもう喉がカラカラになるからそれを、、、

あー、わかりました。
それを何度かやって(喉が)乾くのはなんでかっていうと、、、
ごめんなさい、わたしは古代に生まれ育っていないのでこの当時どういう音を
出してらっしゃったかということはわからないんですけれども、
いまの声聞かせていただいててすごくいいなってのはわかるんですけど、
ちょっと全般的にパッ!とテンション、要するに喉の緊張度が高めになってはると
思うんですよ。

  そうなんです。
  ものすごい緊張しいなので、まずほんとは一番大事なのは緊張しないように
  首を締めないようにすることが必要だなと思うんですけど。。。

ええ、わかりました。
まず最初はなんでしたっけ?

  かんーこーとーは

かぁーんーこぉーとぉーはぁ、ですか?

  ・・・・・・    
  
まあ近いということにしておいてください。
ちょっと違うのはわかるんですけどね。

じゃあ、「か」という KA の音がありますよね?
この、か! け! という音はけっこう強い音なんですね。

で、最初の「かー」のときに「かあー!」とやっちゃうと
これはちょっと世界が変わるんですよね。
で、「かぉー」とこっちに入ると、そうすっとちょっと大和言葉のかぁに
なってくるんですね。
だからそこで「オーソーレー」というこっちのほうのもっていきかたとは
世界が違う。
だから、あくまでも鼻と喉でどうやって違いを出してるかって説明しますとね、
人間のお顔をちょっと描きますね。

これ、人間のお顔を真横でパツンと割った、そういう絵やと思ってください。
で、そこで、お鼻の奥のここに『軟口蓋』(なんこうがい)って場所があります。
この軟口蓋ってなんの役に立っているのか、といいますと、
これは、お鼻から通る音と、お鼻から通らない音ってあるんですよね。
おゆするになんのこと言ってるの? っていうと、通鼻音。
お鼻を通す音というのは、ま行とな行のことです。
まみむめも、なにぬねの、っていうのは鼻から息が出てきます。
それを証明するにはこうやって鼻をつまみます。
で、あ行から順番にいきますね。

 あ、か、さ、た、な、は、あ、や、ら、わ、ん

まあ「ん」は別にして。

あかさたなはまやらわ、ってあって、な行とま行だけは
ここが開くんです。
それで空気がひゅんひゅんって鼻から抜けます。
だからよく「マママママママー」なんて M の音で練習するのはなんでかというと
この鼻の息の通りというのを意識するためです。
鼻の息の通りを意識するために「マママママママー」とか「ナーナーナー」とか
ニャアニャアニャアとか、ラテン系の、要するに『ベル・カント』っていうのは
そこらへんの音をすごく意識させて歌を歌わせます。
ほかには「ンガンガンガ」とかっていうね。
それはぜんぶこの軟口蓋のコントロールをしてるんですね。

ところがこの「か」っていう音はいちばんパツンと上がって
カ! カ! という音なんですが、
ところが、このCさんが今日持ってきてくださった神名書の出だしは
か! じゃなくて、かぁ。ちょっと鼻にかかるんです。
で、そのかかり具合のときに、この軟口蓋のところをできるだけ
ゆるーくしてやるとね、カラスの「かあ」って鳴き声に近いかなあ・・・
自然の中で出てくる「か」の音っていうのは、「かー!」って、
こういうきつい「か」はないです。
かーあ、かーあ、って、どっちかっていうとカラスの「かあ」はこの音に近いんですね。
で、その出だしで「かぁ~」って、こう入ってくる。
で、その感じで軟口蓋、ならびに口の中、喉の奥のきゅん!っていうのを
ある程度は緊張さしてやらへんとあかへんねんけど、でも張しっぱなしやと
さっき言った乾燥がすごく増えちゃうんですよ。

もしね、、、これやってくださいっていうんじゃなくて、どのあたりでやるのが
自分は一番ラクか、というのを探ってってほしいんですね。
まあいま、かあーんーこーとはあー よーそーあーまーりーなぁーつぅー
って、大体やられたと思うんですけど、それを、かぁ~んこぉーとぉーはぁ~って
やるときにね、もうひとつ。おへそのあたり見させてください。
じゃあこのね、わたしの指をお腹でぐいっと押してみてください。
それで肩の力ぬいて、ここをもうちょっと出して、そして「かぁ~んーこーとーはー」って
こっちで支える感じでやっていただけますか。どうぞ。

 かぁー

あ、それでね、スーって息吸ったときにこっちに息入れたらあかんねん。これ。
要するにね、胸式。腹式の問題なんですけど、わたし、これこのパワーボイスで
よく言ってきたんですけど、もしそれを自分でチェックしようと思ったら片手を肩に
もう一方の手はお腹にあてて腹式呼吸をしながら発声します。
そのとき、息吸った瞬間に肩が上がっちゃったらそれはもう胸式になっちゃうから。
だから肩は上げずに、お腹を出して、押さえた指を押し返すようにしながら、

 かあーんーこーとはあー っていう感じで。

こっち側だけグッとだして。はい、そうです。

 かーあーんこーとー

で、どうしてもここ(胸)が出る癖があるから、そうするとキュッと肩にも喉にも
力が入っちゃうんです。
せっかく「かんことは」ってやらはるとき、できるだけ喉まわりはゆるゆるにして
「かぁーんことはぁー」って入りたいときに、キュ!って胸に力が入るから、
そこで喉が詰まるんです。
そこから乾燥が出てきてるって考えられます。
だからぜひ鏡見ながら発声して、自分で「上がってるわ!」って
毎回思いはったらいいと思います。
で、そのときに(動かすのは)お腹だけで、肩は動かせへんぞーとやって
お腹だけをぎゅ!ぎゅ!って」出す。
腹筋の訓練しながらお腹をぎゅっと出して「かんことはーよそあまりーなーつー」
ってやるとラクにできるかなあ、と思います。

じゃあこんどは逆に、響きも、出すのもなんにも考えなくていいですから、
ただ朗読してみましょう。
もうラクに、かんことはよそあまりなつー、というふうにちょっとやってみてください。

  Cさん、神名書をただ朗読する

どうです?
ちょっと押さえられてるとしんどいでしょ?
でも逆にいうと、「せや、せや」って、こうわかるでしょ?
自分はここで上げててんなって。

では、こんどは押さえません。
いまの感じでご自身でちょっとやってみてください。