地声で歌うっていいこと? 3.ファルセットは息の力を上手に使う

地声で声を出しているときに声帯っていうのは絵で描くとこんな感じに見えます。

ふつういつもはポコンと開いてるのが声帯です。
この中は器官です。
その下に蛇腹が見えてます。
息吸って肺の方に落ちるところです。

これを地声で「あー」と歌うと、声帯がピッと寄ってきます。
寄ってきて上から見てたらどんな風に見えるのかといったらなんのことはない、声帯がぴったり合ってるみたいに見えます。
でも、いつもいっているように、声帯と声帯の間には紙一枚くらいの隙間があります。
で、ここでこんな感じに、ふるふるふる・・・・と震えています。

ところが、ファルセットになるとどうなっちゃうのかというと、地声だとぜんぜんテンションがかかってなくてラクに声が出せているのが、裏声になったら声帯が前後に引っぱられちゃうので声帯が前後に伸びます。
そして声帯がピタッと合っているよりは少し隙間が見えてきます。

地声だと声帯全体がうわんうわんと揺れていたのが、声帯の先だけしか揺れなくなります。これがファルセットです。

そうだとすると、ファルセットと地声と裏声を混ぜる、なんてことはできないわけです。だって声帯の揺れ方がぜんぜん違うんですから。

ここを間違えてしまう人が多いんですが、『ミックスボイス』というと地声と裏声の両方を混ぜた声と思ってらっしゃる方がいますが、それは物理的に不可能です。
よく地声7に対して裏声3、あるいは半々で出せるとかいう人がいますがニュアンスとしてはわからないでもなくても、もし言葉でいうとすると地声と裏声は混ざらない、です。
その途中経過はありますが。

裏声というのは、声帯のエッジ部分が揺れているだけなんです。
ファルセットというのがそれです。
そのファルセットに行く手前くらいの感じがミドルボイスです。

レジュメの文章を読んでみましょう。

「特に高い声を出すときに意識的に呼気を多くする。」

要するに、高い声を出すときにはーっと息をたくさん使ってやるんですよ。
息をたくさん使うとどうなるかといったら、間が狭い声帯にいっぱい空気を流してやることで、息の音を混ぜる、という感じでしょうか。
そして、あたかもファルセットなのに少し地声の感じを出させるものを織り込む、というのがミックスボイスです。

「そして声門の閉鎖を弱めたやわらかい声で」

リズム&ブルースなんかでいうところの『シルキーボイス』とか、シャウトしながらブレッシーボイス(息混じりの声)で発声することでさっき話した喚声点、ブレイクポイントをわかりにくくするんですね。つまり、息の力を上手に使うことで声が変わるポイントをわかりにくくする、ということです。それがミックスボイスだってわけです。これがひとつめの解釈の仕方です。

それで2番めはというと、

「頭声を駆使して、高音域を地声のように出すこと」

これもなんてことない、息をたくさん使ってまるで地声のように聞こえるようにすること、その時の音をミックスボイス、という言い方もあります。

線で表してみると、こんなふうに、濃い地声がだんだん薄れていってある点を境にだんだんグラでぃえしょんをつけていって、こんなふうに、なんとはなしに地声が薄らいでいってここでぽーんと声変わりの喚声点がやってきて、その上が裏声になるんですけれども、ちょっと息の力ををたくさん入れてやることによって、ほんとはここはもう裏声なんだけれど、このあたりまではまるで地声なんじゃないかというくらいにやれるんです。
そのときのこの部分をミックスボイスといいます。

では、裏声、地声、ミックスボイス、さあ、歌を歌うときはどこで歌わなきゃいけないの、どう歌ったらいいのということですが、もうそれはぜんぜん関係ないです。
もうほんとに自分が喉を傷めずにここちよく歌えるならどこで歌っていただいてもけっこうです。