「自分に合わない歌を歌うには?」3.いちばん大切なのは歌詞の朗読

つまり、いま歌おうとしている曲をどのノリでいくかなんですね。

まずは菊池さん、
コンサートで笑っていいくらいの感じでいっぺん笑ってみて。

菊池さん「ハハハハ!」と軽く笑う。

Dr.松永:
それでよろしいやん! それGOOD!
ハハハハハ!っていま笑ったの、それが菊池さんの笑い。
その「ハハハハハ!」っていうのを、オペラっぽく大げさにやらずにそのままやったらいいと思います。
そういうときってちょっとくらい音ずれて文句いわれへんねん。
ちょっとそんな感じでいっぺん歌ってみて、さっきのとこ。

菊池さん歌う。

Dr.松永:
うん。そこで、菊池さん、やっぱりちょっとだけカッコつけてはんねん、やっぱり。ね。
さっきよりはよかったと思うんですけど。
だから、その「笑い」っていうのは、ほんとにご自身が軽口混じりに鼻で笑い飛ばすような、そういう感じを入れてったら十分に思います。

歌に感情をのせるのはたしかに難しいんです。
でも難しいねんけれど、そこに感情をばーん!と出せれば少々ピッチがズレたり、リズムがズレてもカッコついてくるってのが歌にはあるんですね。
そうすると、そういう部分がこなせるようになってきます。

さあ、では次の人、
まずちょっとさらっと歌ってみて。どうぞ。

Bさん歌う。

Dr.松永
オッケー。じゃあ、すこし低くいこう。
ご自身のなかでちょっと低めに持っていきはってもいいのよ。
この曲の原調よりちょっと下げても。
まずね、あっ! ごめんなさい。
これは今日まず最初に言うの忘れてた。

まず、自分に合わない歌を自分の中に取りこむのは、朗読がいちばん大切なんです。
喋って喋って喋りまくるということ。

歌詞をなんども、まるでお経みたいに、唱える。
もう歌唱の「唱」やね。

だからこの歌の出だしのとこだったら、

ここへ来ると 心が躍る 憧れつづけてた世界

っていうのを散々言うのよ。
ほんとに自分のもんになるまで。
ね、自分のもんになるいうたらとうぜん暗譜してさ、

とにかく低いので、自分の歌いやすいとこで歌ってみて。

Bさん歌う。

Dr.松永:
うん、うん。ええやんか。
低かったらやっぱり歌いやすいやんか。
で、それをこんどは自分の中で「音の流れ」を身体の中に入れてね。メロディーを中に入れること、その低い音で。
では、こんどは譜面忘れていいから少し高めにやって。

Bさん歌う

Dr.松永

元のキーでちょっと弾いてみてくれますか。
タタタタータータ~ ですね。
これがさっきの母音を活かせ、ってやつですよ。
KooKooEeeKuuuRuuuuToooo ~ ですわ。わかるよね?
後の母音をお腹で押し込みながらやるような感じでちょっと歌ってみて。どうぞ。

Bさん歌う。

・・・っていうぐらいに母音をグイグッと押し込んでゆくってやり方でちょっといけるんだよね。
まあ、まだ喉がザラついてるからしんどいとは思うんやけれど、そこんとこで母音をきっちりきっちり表現していくと、ちょっと楽になると思うので、そんな感じでやってみてください。

あの、やっぱりみなさん音の高低、そこに(自分の声を)はめるっていうのがなかなか難しい、っていうのがあると思うんですけれども、(自分の声の)出るところをまず一生懸命練習するっていうことで(自分に合わない曲を)自分の中に入れていくのが必要ですね。

たとえばこの、「ここへ来ると/心が躍る」っていうのはたしか『リトルマーメイドの』アリエルが大好きな宝物がある場所に1人でやってきたときに、ワクワクしているような、そういうシーンの歌でしたよね?
だから、「ここへ来ると/心が躍る/憧れつづけてた世界」っていうのは、そういう彼女のわくわくする気持ちを(歌で)感じさせなきゃいけないんですけど、それこそさっきの感情をのっけるやり方で、きゃぴきゃぴせなあかへんね。
だったら、自分ってきゃぴきゃぴするときどんな感じなんやろ、って考えてみる。
あなた、うちではなんて呼ばれてんの、ゆかりー! って
いわれてんの、それとも、ゆうちゃん、っていわれてんの何?

ゆかり?
ほんなら「ゆかり、あんた何ニコニコしてるのん! どないしたあ?」みたいな、そんなハッピー!!! ってときある?
どんなときハッピー?

じゃあ、次々においしいものが出てきてわくわくするような、その感情の高まりを思いだして、この歌もっと楽しいないとあかへんやんか。
その感情がどんどん乗ったうえで、「ここへ来ると~」と歌ったらこんなふうになるやんか。
なんかしらんけど胸が心が躍るわ~♪ みたいな。

って、そういう風にやっていくと、ディズニーの四季のゆかりちゃん、っていうのがバン!と入ってくるのができてくるのかな、と思うのよね。

とにかく舞台上での歌っていうのはやっぱり、演出の先生とか舞台監督とかそこのボスとか、いろんな人の望む形に持っていかなきゃならないので、それをこなせるようにいつも自分を用意しとかなあかへんけど、でもやっぱり基本は自分なので、自分はどうやってその合わない、難しい曲を自分のなかに取りこんで合わせていくか、ってことなんですね。
だから、それにはまず繰り返し繰り返し一生懸命その歌詞を唱える、朗読です、朗読。
それで自分のなかに入れていくのがひとつ。
で、どんどん歌詞が入ってきたら基本形としては腹式呼吸で丹田に力を入れて横隔膜下げて、上手くお腹をどん!と前に出す。
横隔膜を下げるのは、さっきやった、おへそのちょっと下をグイングイングインって出すことです。
それでお腹を下のほうに張って、そのとき犬の口にしてハア~
ハア~と声を出す。