外国語で歌うって難しい? 3.母音を大切にする

自分の血となり肉となるまで歌詞を繰り返し何度も自分に叩き込み、またそれを出し、ということをやらないことには歌は歌えない。
実はそれだけ歌を歌うってことは大変なわけです。
でも、もし大変なことをやってみようというのであれば、ほんとにマメにマメにやっていくしか、しかたがない。
でも、ここまでのことをきっちりやるとどうなるかというとすごくいい歌手になってしまうんです!

マイケル・ジャクソンのあの一節がちゃんと耳に残っているのは、マイケル・ジャクソンの歌が上手で素敵だったから。
きっと彼はそれだけ一生懸命おなじ歌をなんどもなんども歌って繰り返し繰り返し自分のものにしていったんだと思います。
ですから、そこまでやるといいものが育って、みなんさんに伝わるようになるんです。

じゃあ、ここまでやったら全然OKなのかというと、逆にこれだけのものが入ってくると「これで自分は歌える」という慢心が生まれて歌詞に引っぱられることがあります。
変な自信を持ち過ぎると、もっと聞いてほしい、聞かせたい、という妙な欲がどんどん出てきて、歌に我が入ってきます。
そうなってしまうと本来の、歌をみなさまにお届けする、聞いていただく、というところからズレてきてしまうんです。

それだけ歌詞を自分に叩き込んで何度も歌って、それができるようになってはじめてメロディーとかリズムをのっけてやってみる。
そして、歌詞にこころをのせるひとつの方法に、母音を大切にする、というやり方があります。

A days of wine and roses 、という歌詞にしても、私は「デーイズ」にも「ワーイン」にも「ローゼズ」にもしません。
この棒線の伸ばすところを拗音(ようおん)というのですが、この部分を一個ずつ母音に切るんです。
なぜかというと、そのほうが気持ちが乗りやすいからです、不思議なことに。

音を一塊でとらまえるのではなく、細かく切りながら感じる、すべての音を感じつづけるってことが大切です。