声の出にくい人の発声法 4.息は吸うより吐くことが大事

あくびをするというのはどういうことかというと、このほっぺ、あご、舌の形が最も口の中に大きな空間を作りやすいからなんです。
あくびをするときというのは、人間が酸素不足のときですよね?
ですから、あくびというのは身体の中に酸素をたくさんとりこむのに適した形であるのと同時に、身体の中の二酸化炭素もたくさん出せる形であるということです。
息というのは、吐かないと吸えない。
つまり、最も効率よく息を吸ったり吐いたりできるのがこのあくびなんですね。

でも、あくびをしようと変に意識するとできない人がいる。
そういう人は、自然にあくびが出たときのことをよく覚えていてほしいです。
ほかにリップローリングといって唇を揺らす練習、これも口のまわりの緊張をゆるめてやわらかくするのに役立ちますが、これは歌うときに口のまわりに余分な力を入れないための練習です。
タンローリングもそうです。
こういったことをやって口や舌をやわらかくしておいてから、あくび溜息法をやって発声する、というのは、身体のかたちにすごく合理的で、理論に沿った声の出し方です。

皆さん、呼吸というのは吸うのが大切だと思ってらっしゃると思いますが、呼吸法で大切なのは吸うこと以上に吐くことなんです。
あくびをするときには、ゆっくり息を吐いて脱力するようにする。
溜息にもいろんなタイプの息の吐き方がありますが、一度やってみてほしいのは、口を細くすぼめて、まるで口から1本の細い糸が出ているような感じで息を細く長く吐きつづける・・・
これをやって30秒もたないようだと長い息で歌ったり喋ったりするのは少しキツイですね。
お年寄りや、煙草をたくさん吸う人はまずできません。

瞬間的に一気にたくさんの息を吐くのは誰でもできることですができるだけ少ない、糸のような息を出しつづけるというのは、自分の肺活量をたっぷり上手に使えるということなんです。
これくらいの糸のような少ない息でもけっこう大きな声は出ます。
さらにふだんから腹式呼吸をやってお腹周りの筋肉を鍛えていると息を吐いても一気に肺がしぼむことなく、息が長続きします。
この糸のように息を吐くのと、腹式呼吸の練習をやっているだけで長く歌い続けたり、話しつづけたりということが楽にできるようになります。
これは皆さんがこれからしっかりした声をたくさん出していくのにたぶん使える方法だと思います。

呼吸法が上手にできてないと人間はすぐに喉が乾いてしまいます。
空気が乾燥してるとき、粘膜が乾燥しているときは喉も乾きやすくなる。
さらに年をとって50も過ぎると、あっという間に口も喉の粘膜も乾いてしまいます。
声帯というのは粘膜ヒダですから、それが乾くと途端になめらかでつややかな声が出にくくなる
そういうときどのようなことをしたらいいかというと、こまめに水を飲むこと、コラーゲンとかビタミンCのようなサプリメントを摂ること、それから唾液をたくさん出すこと。
唾液をたくさん出すためには酸っぱめのシトラス系のキシリトールのガムを噛む、ですとか毎回のごはんをひと口30回以上よく噛んで食べることなんかがいいです。
そのなかでも、ごはんをよく噛んで食べるというのはいちばん唾液が出ますし、喉や声帯だけじゃなく全身の健康のためには大変重要なことです。