「自分に合わない歌を歌うには?」2.自分の声域を広げるコツ

いまみたいにやっているときっていうのは、喉は開いてるしわたしもかなりけっこう低い音が出るんだ~
って、できるわけですよ。
そうするとちょっと低いほうの開発はしやすいです。
これをやるとき、肩に力を入れない。
肩に力を入れないでやろうと思ったら逆に肩をぐん!と上げてみる。そして、どん!と下げる。肩を揺らしてぶらんぶらんにしておいて、お腹の下をどんと出して、はあはあやって、低い声を順に出していくと、意外と低いところも出せますよ。
そんなんでちょっとさっきのやってみてもらえません?

長谷川さんバスガールの歌うたう。

そう! そのときに、ちょっとまだしんどいときがある。
そのときどうしたらいいのかっていうと、

②声を音の高さに合わせるために

これがわたしがよくいうことですが、
ここで、母音発声をしていきます。

さて、母音発声って何か?

wakai kiboumo koimo aru という歌詞を

わあかあいい きいいぼおおうもお

こおおいいもお ああるううう

と、このくらい母音を強調して発声するんです。
実際はリズミカルに瞬間で過ぎ去ってしまう歌詞ですがこれをゆっくりやります。
そしてひとつずつの母音のところにタメを感じるんです。
そしてその母音をしっかり発声するときに、お腹の下に1回ずつぶつけるようにする。
こんなふうに。

そうすると、さっき歌っていただいたときのように、低い音すぎると、ちょっと音がザラッとしたり息が抜けたりするじゃないですか。それを、母音が来た瞬間にお腹で息の支えをとってやると、音が濁らないし声がひっくり返ったりしないんですよ。
これ、高い音のときもそう。
仮にたとえばこれを高い声で歌ったとして、高い音を出すときも、母音のところでキュンキュンって下腹に押してゆくみたいな感じで腹式呼吸をしてあげると、音が濁ったりアウトにならないんです。
それが自分の声域を広げるコツのひとつになります。それで、ちょっとさっきのとこやってみてください。

長谷川さん再び歌う。

Dr.松永:
あ、いま抜けた、ここが。抜けたからや。
そう、そこで抜けちゃうとそうなるんです。
ずーっとお腹を外に出しつづけてゆくと、そういうふうに
音がひっくり返りません。
それが『腹式呼吸』っていうものなんです。

ま、そんなふうにしてこの母音の部分、あいうえおがやってきたときに、お腹をぐっぐっとだして行くと、高い音が出しやすくなったり、低い音が出やすくなります。

では次、いきましょうか。

さて菊池さん『公爵様、あなたのようなお方が』がなんですけど。

菊池さん歌いだす。

Dr.松永:
あ、なるほど! 笑い声が歌になってて、それが自分の歌い方では笑ってないと。それが難しい、ということですか。
わかりました。

これはどういうことかというと、要するに歌詞に抑揚をつける、っていうのかな。歌の中で、どう自分の感情を乗っけるか、ってやつなんですね。
『荒城の月』なんて古い歌があってね、春高楼の花の宴~
なんていうと、この静かなのが感情やねんけれども、あんまりこう感情的にはやったりしないですね。
有名な、セックスピストルズなんていうパンクロックの歴史的なバンドがありまして、彼らがフランク・シナトラが歌って大ヒットした『マイ・ウェイ』ってありますよね、
And now, the end is here ~ ってやつですよ。
要するに、人生生きてきて、もうこの人生もそろそろ最後に近づくけど、もう後悔することいっぱいやねん。どないしようか、みたいなそんな歌ですよ。ところがそれを、セックスピストルズのパンクロックの大御所はですね、あのすごいパ
ンクロックに乗せてガンガンやったわけですね。で、それでフランク・シナトラにしてもセックスピストルズにしても、どっちも歌に感情ごんごん乗せてってはいるわけです。
乗せ方が違うだけ。
だけれどオペラをやるとき、あるていどきっちりやらなきゃならないとみなさん概念があるわけなんですけれども、でも歌っていうのはほんとはもっとラクチンでフリーなもんです。

まず、じゃあ! (自分が)笑うとき、どない笑うかいうことなんですよ。いまの例なんですけど、ハハハハ!っていうのであれば、人前で笑うときどんなふうに笑うのん?っていう話やよね。ま、わたしだったら「アハハハハハ!!」って
大笑いするのか、クックックッ・・・ってクスクス笑いするのか、いろんな笑い方あるやないですか。
ただ、そこでまあ、監督なり演出の人が、そこでどういう笑い声を求めているかっていうことなんですけれども、オペラだったらみんなとの流れですからねえ。コンサートであんまり大仰にやったら、「なんやあのひと、アホちゃうのん」っ
て言われる感じでしょ?
でも少なくともね、笑わないとあかん、ってのがあるわけですよ、ね。
っていうのは、感情をガンガン乗せていくタイプの歌っていうのは、『ずいずいずっころばし』って知ってます?
あの『ずいずいずっころばし』なんて、あれほんとに昔の歌で、男性と女性の絡みのある、そういうセクシャルな歌だ、っていわれたりもしてるんです。だからそういうふうな歌の内容を知っててちょっとエッチな、ちょっとウフフな歌と思
いながら歌うとどんな感じになるか。
逆に少年少女合唱団みたいなのが50人くらい集まってこの歌を歌ったらどうなるか、とかね。