「発声力で賢くなる方法」2.脳のフォーマット

音には、人間の脳みその中を整理整頓する力があります。
たとえば字を書くとき、何もない白い紙に書くのと、マス目があるときではどちらのほうが書きやすく、わかりやすい字を書けるでしょうか?
コンピュータだって、ただ機械がドン!とあるだけでは何の役にも立ちません。
そこに必要なソフトを入れたり、フォーマットをしたりしてやっと使えるようになるわけで、それは人間の脳もおなじなんです。

たとえばこの字を書くときにあからじめマス目をつくっておく、というようなことを、音声の世界では「音を聴く」ことでできるようになります。
つまり、「おはようございます」という日本語をずっと聴きつづけることで脳に日本語のフォーマットができて、そこには日本語が入れやすくなる、ということです。
ところが日本語には敬語があるからちょっと面倒くさい。
ことによってはぜんぜん礼儀ができていないような国の方々、日本ではああいう人たちはちょっと・・・と思われる国の方々のお子さんが日本で生まれて日本語を喋り、日本人と一緒に暮らしていると、自然と日本人的な礼儀がわか
るようになって自分でもできるようになる。

・・・というふうに、礼儀正しい日本語の中には、礼儀正しい日本の所作ができるようになるためのフォーマットが入っている、ということです。

それはもちろん、小さな子どもの頃からやっていればいいにこしたことはありませんが、かといって大人になってからでは習得できないかといったらそんなことはありません。

たとえば「みなさんどうも、こんにちは。どうぞよろしくお願いいたします」というところをいつも「ああ、どうもみんな。こんちわー! よろしくおねげーしやす!」といってるような人でも、ちゃんと訓練すれば歪んだ日本語のフォーマットを直して正しい話し方に変えることもできます。習うより慣れろ、という言葉もある通り、練習も必要です。

人と会話のやりとりをするなかで、何をいってもいつも一言二言よけいなこと(否定的なこと)をいう人っています。
残念ながらその人の頭の中には『を褒める』というフォーマットがないんです。
そんな人には人が寄っていきません。
そうしたらまずはそういう人は(最初は難しいかもしれないけれど)いつもは斜に構えて「悪くないね」といっているところを、普通に「いいね!」というようにしてみる。
「これどうぞ!」といわれたらとりあえず「素敵だね!」といってみる。
最初は自分でも気恥ずかしいかもしれないけれど、ちょっと無理してでもそういってみるんです。
そうしてちょっとがんばって自分の心の中に『褒めのフォーマット』を作っていく。
そして、それができあがったとして上っ面の言葉だけでやってたら、やっぱりそれは人の心には響きません。
フォーマットができあがったら次のレベルです。

音というのは表面的に見るとそれだけで終わっちゃいますが、音というのは空間の中で三次元的に広がります。
そして、その三次元的に広がるときに心がこもる・こもらないということで響き方がちがうんです。

さて、ここから先は『音』についてのお話です。