「腹式呼吸の秘密、その3!」1.腹式呼吸にもバリエーションがある

パワーボイスセミナー 第80回
「腹式呼吸の秘密、その3!」
~ 腹式呼吸はおなかの一体、どこを使うのが良いのか?! ~

今回はこのパワーボイスセミナーで過去に2回行ってきた「医学的腹式呼吸」の
詳細解説を行います。
また、あわせてワークショップも行います。
腹式呼吸では簡単にお腹を使うと言っても、身体の前面、胸から太ももの間までは
ぜんぶ、おなか!
それでは、このお腹のどこの部分をどう使うのが最高のステージを作るのに適して
いるのかを徹底解剖いたします。
お腹の筋肉の動きと心の動き、この関係性をマスターすると、ステージでの
お客さんへの伝達力がぐん!と深くなることに気づかれるでしょう!

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はい、みなさん、こんにちは!
松永敦でございます。
それでは今日はですね、腹式呼吸の秘密 その3! というのをやります。

腹式呼吸というのは、お腹を使った呼吸、というのは
まあ大体わかっていただけると思います。
ところがお腹ってこれ全部ね、けっこうデカイ臓器っていうか、
けっこう大きいところですよね。
それで、わたしはよくこの『丹田』っていう場所、女性で言うと恥骨の少し上
なんですけれども、ここを意識すると、横隔膜のコントロールがつけやすくって
腹式呼吸がしやすい、というお話をしてきました。

その横隔膜、ちょうどこの肋骨の一番下の裏側にベカーッとある膜、
膜って言ったってけっこう分厚い、
どっちかっていうと筋肉板みたいなものなんですね。
その筋肉板みたいなやつがこの丹田を上手に意識することで、
こううまく下がって肺が広がったり、またキュって上がって
ここらへんが絞り込めたり、とか、いろいろするわけなんです。

ところが、それだけできてたら医学的腹式呼吸できるのか、というと、
ある程度はできるんです。
どのようにして自分の声をみなさんに聞いてもらおうかといったときに、昔みたいな、
ローマ時代、ギリシャ時代みたいに電気のない時代、音響機器のない時代にやってた
歌い方とはとうぜん(いまは)変わってきてるんですね。
そしたら、その時代に美しいと思われてたものがいまの時代にちょっと合わないか、
それがもう少し小さなところでやられたら「ちょっとうるさいな。もう少し静かに
やってーな」という感じになるのか。
やっぱりケースバイケースということになってきたわけです。

そのときに、いつだって丹田に力を入れて横隔膜を下げて、確実に息の支えはここ1個、
みたいな感じで声を出すのがいいのか、、、、ん? ちょっとちがうのちゃうのん?
息の支え、ここだけ? え、どこ? って感じに、
おなじ腹式呼吸でも実はバリエーションがいっぱいあるそ、っていう、
そういう話です。
それが実は今回の『その3!』です。

クラッシックってひとことで言いましても、これは日本の邦楽ではないわけで、
どこ楽? といったらこれは洋楽っていわれるんですけれども、
元をただすとアメリカの音楽じゃないんですね。
ヨーロッパですね。
だいたいラテン系、です。
イタリア、大体ギリシャ・ローアできてますからイタリアでこうくるわけです。
ところがじゃあ声楽はそこでだけ発達したのかっていうとそうじゃないです。
発展したのはドイツ系もあります。
それからフランス系もあります。
まあ、ちょっと飛んでイギリス系もあったり、少し横にずれるとロシア系なんかも
あったりするわけです。

そうすると、みなさんそれぞれのお国柄、そこの国の気質、ラテン系とゲルマン系は
けっこう違います。
それからまた、最初は教会なんかでよくやられていたわけだから、まさしく宗教音楽として
奏でられていたものと、そうじゃない、いまクラシックっていったってその時代のポップス
ですからね、その時代の流行歌としてやられてた声楽、もしくは戦争などのときにちょっと
使われてたマーチ的な音楽とか、それはいろいろあったわけです。

で、そのいろんな国のいろんなグループのいろんな時代によって息の支えって
けっこう変わってきたんですね。
じゃあ、それをどんなふうにわたしたちは学んで自分のパフォーマンスに
取り入れたらいいのか。
その話を今日はいたします。

まず、声!
声っていうのは口から出るわけです。
よく「声は腹から出せ」なんていうこと言う。
それがまあこの腹式呼吸の基本なんです。
ところが、お腹から出るものであっても、実際、音って口から出てます。
まあ、身体全体から出るって言い方もありますけど、でも言ったって
最終的には口から出るんです。
なんでか。
声いうのは空気の震えです。
ブルルルルル・・・・
で、じゃ、いまわたし舌でブルルルル・・・ってやりましたけど、唇でブルルルル・・・
もありです。
でもこの声は、「あー」っていうのは、ここのちょうどお喉、つば飲んでみてください、
みなさん。
そのとき手で触ってね。こっくん、って上がりますね。
これ、喉頭、ですね。

ちょっとお待ちください。
これ、喉頭。喉の模型です。
これは大体ふつうの人の4倍のサイズです。デカいです。
この大きな喉頭を小さく縮小したのがここに入ってるんですが、
これはつば飲むと上下に動きます。
上下に動くってのはなんでか。
これは実はお喉というのは、最初は歌を歌うためにあったわけじゃないんですね。
人間にとっていっちばん大切なのは、ごはん食べることと息吸うことと
水飲むことなんです。
いろんなことします。

いつもわたしがよく描く絵なんですけれども、
これ頭まっぷたつに縦割りにしたところの絵ですね。
で、これでわたしたちが息を吸うとき、どんなふうにして吸うの? っていうと、
こうやって鼻からひゅーって空気が入ってきます、そしたら空気どこいくの?
ぴゅーってこっちです。前のほう。
気管って前にあります。

ここ、口の中の固いところ。
この固いところを硬口蓋っていいます。
やわらかいところを軟口蓋っていいます。
ちょうどここらへんに喉ちんこがあります。
さあ、それでこっちのほうに空気が通るんですが、食べものは?
食べものはこっちです。
口から入ってきます。ピューんと口から入ってズドン!
後ろのほう、これは実は食道です。
ちょうどこのお喉のところでクロスするんです。
お喉っていうのは実は空気も、食べものも出たり入ったりする、
非常に微妙なところなんですね。

で、この交通整理を上手にしているのが実は、これ舌ね。舌。
この舌の下に『喉頭蓋』ってのがあります。
こっちから見たらこういう向きにほんとは入ってるので、ここ、これね、
喉頭蓋っていう、こんなのがありますけれども、ごはんを食べるときに、
これがパカンって閉じます。
こうやって、お喉のところにあるフタが、ふだんはこうやって立ってるんですね。

だから「あー」って声出すときには喉頭蓋はひょこッと立ってるんです。
ところがこうやって、ごはん、お水なんかが入ってくると、
立ってたフタがパカンと閉じる。
これが立ったままだとお水やごはんが気道に入ってきてしまいます。
これが声帯気管のほうに入ってきてしまうと、えらいむせてしまいます。大変です。
それをほったらかしにしていたら肺がじゃぶじゃぶになって、そこでばい菌なんて
ものが出ようものなら、これがお年寄りに多い誤嚥性肺炎というのになっちゃいます。

で、それにならないようにこのフタがポコン!って閉じるんです。
あら不思議!
どうやったら閉じるのか。
これが喉が上に上がる仕組みなんです。

もういっぺんみんなここを持ちながらつばを飲んでください。
どんなふうに動きました?

上に上がって下に下がった。

そうなんです。

つば飲む瞬間、コクって上がって、これ上がりっぱなしだったら大変なんですよ。
上がりっぱなしだったらここの気管のフタ閉めたままになってしまって、息ができない!
ってなっちゃうんです。

だから最初こっくん、って、ぜんぶ飲みこんで用事が終わったらまたスッと下がってくれて
喉頭蓋がパーンって立って、息が吸いやすくなります。
こんな便利なものです。

だから、ごはんをちゃんと間違いなく食べれるようにするためになんと、
この喉頭には12対の24本の筋肉がつらなってまして、とにかく上のほうに
引っぱれるように引っぱれるようにってできてます。

だけど逆に、下に下がるのは、重力にまかせしといたら勝手に下がるだろう
いうことで、なんと一対、2本しかありません。

で、それで人間の身体についてはとにかく喉頭というのは上にひっぱりあげる
いうことにいっしょうけんめいになってる。

さあ、じゃあ、下のほうに下げる筋肉はたったの1対。2本しかない。
なら、やっぱり上に上がってくれてたほうが健康にいいんやったら下に下げんで
いいのんちゃうのん? っていうと、それが違うんですね。

さ、こんどみんなでもうひとつ一緒にやってみます。
喉持って、「マーマーマーマーマーマーマー」ってゆっくりやってみましょう。
いきますよ、せーの!

マーマーマーマーマーマーマー

どんなふうにお喉、動きましたか?

上に上がったり、下にさがったり。

そうなんです。
これ、音と相関があります。

マーマーマーマーマーマーマー

って、こんな感じで上がって下がります。
で、それはなんでかっていうと、そのほうが実は高い声が出しやすいから。
また低い声出すときには下がったほうが出しやすいから。

ところが、マーマーマーマーマーマーマー・・・って、すごく高くなってくると、
上に突き当たってしまうと限界になっちゃうんですよ。
そうするとあんまり高い声だしにくくなるし、喉も実はわたしの首も一般的な人と
同じように下のほうが肩についてるから広い。上のが狭いですね。

だから、簡単に絵に描きますと、首はこんなふうになってます。
そうするとここに喉頭があって、上のほうに行くと、当然ですけど広いところから
狭いところにいきますから、のどギュッって詰まります。