「気持ちよく声を出すために、心と身体を整えよう」5.母音発声

さ、ここからはお口の話になってきます。
よく高い声を出そうと思うと喉が引っかかる、それから発声練習をしていると
喉がかゆくなる、ヒリヒリする、チリチリする、そういうようなことを経験
した方いらっしゃいません?
・・・けっこういらっしゃいますか。
それはどうしてか。
さっきも言いました。
喉って下げとかへんと、高い声が出しにくくなるんです。
いま低い声でてるやん? ・・・いやだからこのままでひくくするんじゃなく
て、この低い位置に喉を置いたまま、それでだんだん高くするんですね。
マーマママママーマー・・・ っていうふうにね。
喉は下のほうに下げといて、音だけ高くしていく~ってことなんですね。
そうすると喉がチリチリしないんです。
だけど、どうしてもチリチリする人は喉の奥が詰まってる人が多い。

じゃ、詰まらせないためにどうするのか?
舌を使います。あっかんべ、です。
舌を出す、ってことについてなんですけれども、舌をべーーって出すとき、
本気で出して。べーー!って。
そう! しっかり出してほしいの。
これだけ出すとどうなるのかといいますとね、なかなか出ない人は自分で
まあ手をきれいにして舌持って引っぱってもいいんですけど、舌がべーって
前に出ると、喉はポコンとひらくようにできてるんです。
だから試しに舌出しながらだと、まあ声にはなりませんが、どんな音になるか
聴いてみてください。
まず舌出さずに、ママママママママー。こんな感じです。
今度は舌出してやると、へェへェへェへェへェへェへェーーー・・・・
あんまりきれいな音じゃないけど、喉はなんか開いているのがわかりませんか?
この状態で発声練習やってたら声帯がぶつかりあわないのでチリチリしたり、
かゆくなったりしません。
で、さっきやったキリンの首がこのときは有効に使えます。

キリンの首長く伸ばしてー
肩落としてー
ヘェァーハァーハァーハァーハァーハァーハァーーーー・・・
ヘェァーハァーハァーハァーハァーハァーハァーーーー・・・
ヘェァーハァーハァーハァーハァーハァーハァーーーー・・・

ってこれでやってると、ほぼ喉はチリチリすることなくなります。
それだけ喉をベーって出すと、喉が広がりやすくなります。

で、その感覚がわかりにくいっていう人は、ワンちゃん。
夏の暑いときに犬がやってるみたいにハッハッハッハッハッハッハッハッ・・・
ってやってるのイメージしてみてください。
犬って汗でないんです。汗腺がないの。
彼らがどこで熱流を放出しようかというと、口からなんです。
だからやつらは暑いときハッハッハッハッハッハッハッハッってやって、
舌から熱を出してるんです。
ハッハッハッハッハッハッハッハッ
これで熱が出るくらいにやってる、そうすると喉はパカッと開いてる、
そうするとすごい勢いで空気が出入りするから中から冷やしていく、
ラジエーターみたいな役割をしている、、、そういうことなんですね。

で、これでハアハアやるくらいに舌をベーって出して、その次にはそういう
口の構えができてきたら、それで母音の練習をしていきます。

ここにあるのはひとつの練習の仕方です。
イエアオウウイウイアオアオモアイ、、なんて書いてます。
あのアナウンサーさんとか、声をお出しになる訓練をされる人なんかはこう
いうことに習熟されてらっしゃったりしますけれども、母音を出すのが何故
いいのか? って言いますと、母音っていうのは、けっこう喉の奥からこう
形が作られていくんですね。

子音、ってありますね。子どもの音。
これはね、子どもの音、っていうだけあって、唇とか、舌先とか、正式には
舌先(ぜっせん)っていうんですけども、そっちのほうをたくさん使うことが
多いことですごくバリエーションのある音を作っていきます。

だけど母音はですね、もう口全体とか、喉の奥とか、いろんなところを使い
ながら実は発声してるんですね。
だから母音がしっかり気持ちよくだせる、いわゆる活舌がいい、ってやつです。
それにならないと、お喋りをしていても、歌を歌ってても、なかなか相手に伝
わらない。

で、また、活舌がいいののいったい何がいいの? ってことなんですね。
アドウモ、ハジメマシテ、コンニチワ、ボクノナマエハマツナガデス・・・
って、こんなふうにボソボソ言われたってなんかうれしくないよね?

さっきもおしゃっていただいたように、伝えなきゃだめです。
 
 みなさん、どうもこんにちは! いらっしゃい。松永です。
 今日もみんなで一緒に楽しみましょう!

こっちのほうが伝わりやすいですよね。
ただあんまりこれをわざとらしくやるとうるさそうに聞こえます。

じゃあ、そのときに、わざとらしくなく、ウルサクなく、きっちりやろうと
したら、母音にかるくきっちり力を入れる、、、
そういう訓練が必要です。

そのひとつとして、このイエアオウウイウイアオアオモアイみたいに母音を
しっかり出していく、ってのもいいんですが、ほかの方法としては、好きな
歌、自分が上手に歌いたいなという歌を母音だけでやる、っていうのがあります。

よくこういうのは最近みなさんもお聞きになることはあると思いますけど、
『母音発声』ってやつですね。

母音発声。
なんなの? というと、さっきの『夕焼け小焼けの赤とんぼ』でやってみますと
ユウ・ヤア・ア・ア・ア・ケエ・コ・ヤア・ケエ・エ・ノオ・オ・オ
アカア・トオ・オ・オ・オ・ン・ン・ン・ボオ・オ・オ・オ・・・・
って歌があるわけですけれども、それを母音だけ拾ってやっていく。

そうすると、ウ・ウ・ア・ア・ア・エ オ・ア・エ・エ・エ・オ・オ
ア・ア・オ・オ・オ・ン・ン・ン・オ・オ・オ・オー
ってなります。

上を向いて歩こう、ってのがあるとします。
 
 うえをむぅーいてぇ あーるこぉうおうおうおうー

ってのがあるとすると、

 ウエエエヲウウイテー アアアウオオオオー
 アアイアー オオエー アイオオオイー

ってなります。
そんな感じです。

それで母音で1個ずつ音出す、さっきのお腹でリズムをとりながら発声する。
ユウアアアアエ オアエエオオオー なんてやってますと、
それがまとまったときに、ゆうやあーけえー こーやけーえーのー あかあ
とぉーんーぼぉーーー ・・・ なんて歌えるようになります。

っていうふうに、音がひとつずつ立ってくる。
それがどうして、なぜ必要なのか。
それだけ活舌をしっかりして、1個ずつの音をとれるようにすると、
喉に力があんまり入らなくなるんです。

活舌がいいっていうのはべつに顎に力を入れてやっているから、というわけ
ではないんですけれども、喉に力が入らなくなる。とすると、下手に余分な
力が入らへんから声帯が痛まなくてすむんです。
結節とか、ポリープとか、できにくくなります。
そしてここ(喉)はいつも広がってるんですね。
ぽか、と広がってる。ハッハッハッ・・・ 犬並に。
そうすると、犬並みに~ ここが広がってるからあ~ 喉がいたまずに~
ゆうやぁーけ こやけぇーのー ってできるようになるんです。

だからなぜに母音発声をするのか、活舌を良くするのか、舌をベーってだして
ワンちゃんみたいなことをさせるのか、
そういうのはぜーんぶ実は喉を広げて余分なところに力がかからないことの
ための練習だったんです。

とうぜん喉に入ってるとこんな苦しい声になっちゃいます。
身体中に実は力が入ってくんです。
喉が締まると、不思議なことに。
つらそうでしょ? 聴いてて。嫌でしょ?
聴いてる方も嫌になるんですよ。喉が締まった歌なんて。

喉がポカンと広がってるとき、やっぱりね、首と胴体つながってる喉が
広がってるって、ラクです。
喉が広がって身体がラクになってると、歌も伸びやかになります。

ハイ、で、さっきワンちゃんの練習をしましたけれど、もうちょっとだけ舌の
練習をさせていただきます。

どういうようなやり方があるのかっていうと、こんどはワンちゃんから、
哺乳類から両生類の世界に入っていきたいと思います。
カエルなんですね。
ゲロゲロッ ゲロゲロッ ゲロゲロッ
なんてカエルは鳴いてます。
その舌の根っこのほうをちょっと開けてあげるんですけどね、
これは少しコツがいります。

 エォク エォク エォク

舌がね、こう奥から手前に動いてます。
やってみれる?
あのね、日本人ってこれがすごく苦手です。
あの Girl って言葉ありますよね?