「歌の素、歌のエネルギーの創り方」3.伸びやかな声をつくるために

伸びやかに歌いたい、歌おうと思ったらやっぱり伸びやかな筋肉
の動きが必要になってきます。
前に『14筋体操』というのをこのセミナーでお話ししました。
この人体模型図に書いてあるのは、人間の身体の中にある経絡と
ツボの絵なんですよ。

代表的な経絡は14本あります。
その14本の経絡を整えると、けっこう身体がリラックスして動
きやすい、って、そういうお話をしました。
中でも特に大切なものが2つありますから、もういっぺん2つだ
けおさらいしてみましょう。

「任脈」という経絡があります。
それはどういう風に流れているかというと、恥骨のあたりから顎
のあたりまで流れているんですね。
ですので、その流れを意識していただいて、こういう風に自分の
前で両手をひゅーと上にあげていただいていいでしょうか。
そうそう、そういう感じ。
ここに太い線が流れてるよ~って感じで、、、
下ろすんじゃなくて、上げるんやよ!
下から、こうやって上げていきます。
これが任脈という流れです。
で、この任脈の流れを感じるために、トリガーポイントの筋肉が
あって、それが背中の方にあるんですけど、そこを刺激してやると
流れがよくなるんですね。
こういう動きです。
身体の前で手をバタバタさせて、ちょうどお股のあたりを隠すよう
な動きです。
歌う前の準備体操なんかにもいいです。

もうひとつあるのが『督脈』です。
それは背中のお尻のあたりからぐるんと回って鼻の上あたりまで
きてるんですね。
だからこうやって後ろのほうからぐるぐる頭の方へその太い脈が
回ってると思って回してください。
で、これを活性化するにはどうやったらいいかというと、ペンギン
さんみたいにゲンコにした両手を後ろの腰の両側にあてがって肘を
クイクイクイと動かします。
で、これで身体をリラックスさせます。

ほんとは14種類あるのでぜんぶやったら1番いいんですけど、
でもこの2点をやるだけでもちょっと身体がシャキッとします。

筋肉を上手に使ってあげると身体の動きがよくなって代謝もよく
なるし、ラクに筋肉が動いて変なところに力が入らなくなるので
声がだしやすくなります。
これでエネルギーの回り方がよくなります。

もうひとつ。
柔軟体操について。
よく、「じゃあ、柔軟体操やりましょう!」といって、一生懸
命やりすぎてヒイヒイハアハアいうときがあります。
これ、ほんとにいいエネルギーを得るためには良くないです。
どういう柔軟体操がいいかというと、伸びやかにやりたい。
ラクーに声を伸ばしでいきたい。
そういうときにウンウン言いながら筋肉を伸ばしてたら声の伸び
やかさは出てこなくなります。
で、また筋肉というのは、ギュッと引っ張るとキュッと戻ろうと
する性質があります。
ですからラクに気持ちよく伸ばしてあげる必要がある。

最近、股割の本があるの知ってます?
その中にもいいこと書いてありますけど、けっして一生懸命やら
ないでください、って書いてあるんですよ。
ですからとにかく、ちょっとづつちょっとづつ、少しづつ少しずつ
やって伸ばしていくのがすごくいいです。
変な筋トレやってしんどいんやったら、力を入れすぎない柔軟体操
ってのがすごくいいです。
これをやることでふだんから自分の身体のエネルギーを回せるよう
にする、っていうのがすごくいいんですね。

なんでそんなに筋肉やら骨にこだわらなきゃアカンのか。
わたしたちが歌を歌うときってふつうこうやって直立して歌うことが
多いです。
立って歌います。
座って歌うのもありですね。
ピアノ弾いたりとか。
ドラム叩きながらとか。
でも地面があるから、立って歌うことわたしらできてますけど、地球
だけじゃなくてどこの星でもそうなんですけど、万有引力ってのがあ
って、この大きな地面っていうのは、わたしたちをぎゅんって引っ張
ってくれています。
この『引っ張る力』ってのに抗って足で立ちーの、腰で立ちーの、頭
から肩、手、ぜんぶで身体がしっかりしてこそわたしたちは身体って
のが使えるんですね。
この地面がもしなかったら、「ああーっ!」って下まで落ちてきます。
ここ4階やから1階までか地下までかわからんけど落ちていきます。
ほんとに底がなかったら「ひえー」って落ちてっちゃうんです。
ここがあるから落ちずに立っていられる。
すなわち、何を言いたいのかと言ったら、要するに、これも作用反作
用の法則なんです。
地面があるから、うん!って地面に飛び降りたらまた地面から突きあ
がってくる力があるんですね。
この力を感じることで「はあー」「あー」「ああーー」って声が出せ
るんです。

よく「腹から歌え!」っていうじゃないですか。
確かにそうです。
さっきもいいました、横隔膜、丹田、これみーんなお腹のあたりにあ
る経絡のツボだとか筋肉で、東洋医学的にも西洋医学的にもここらへ
んを上手に使うことで腹式呼吸ができるんですけど、でも地面がなけ
ればひっくりかえっちゃうんですよ。
だから地面、地面の上にきっちり立ってるんだということで、いつで
も地面のことも感じて歌ってほしい、ということなんです。

身体の筋肉を上手に動かさなきゃだめです。
よく「筋肉をほぐすほぐす」って言いますけど、ほぐす以上に動かして
ほしいんですね。骨もこみで。
で、筋肉上手に動かす、っていったときに、いちばん上手に動かすため
には、ちゃんと地面があるんだよー、地面の上に立ってるよー、ってこ
とをしっかり感じることで、腰がしっかりし、お尻が、お腹がしっかり
するよ、ってことなんです。

ですから「腹から歌え!」ってのもありますけど、もちろん腹の下には
足もあるからさ、それを忘れないで歌ってね、ということです。
そうするとエネルギーの回りがすごくよくなります。

いろんなエネルギーを回すことについてお話してるんですけど、ただ力
を入れればいいってもんじゃない。喉に余分な力を入れずにリラックス
することが大切です。その喉に余分な力を入れないようにするために、
さっきやった14筋体操をやるとこのあたりがひらいてきます。

だけど、もう一つあるのは意識の問題。
さあ、これから歌うぞーというとき、わあ、こわいな。知らん人いっぱい
来てはるわ。お客さんやわ。どないしょー。いい声でるやろか。とか。
みんなの前で喋るのこわいなー、とか。
大概みんな思います。
そうするとこう、キュッと(喉が)縮まっちゃうんです。
そういうこととか、どないしょ。今日これ終わった後にあそこに行かな
きゃならないな。あそこであの約束間に合うかな。ちょっと3コーラス
のところ2コーラスにしようかな。、、、なんてことをいろいろ考えて
たら喉はキュンキュンキュンキュン締まります。

喉はもうへろへろに広げて、スカスカにして、ぼかんぼかん声がでる状
態にしたいのに、しょうもないことに気がそがれると全然、人間はだめ
になります。
だから、それこそ演出の先生だとか、それこそ舞台監督とかいろんな人に、
デカい声出せのとかなんやらかんやら言われるんですけど、あの人がああ
いうからアレにあわしてコレにあわして、、、なんていっぱい気を遣うと
ほんとに余計に喉が詰まってしまうんですね。
そやからもう舞台に立って歌うとなれば「もうかまへん」と、誰が何言お
うともうここまで来てんねんから」くらいに思って。
よく簡単に「自信を持って」とかいうけど、ね、人間そんな簡単に自信持
てないんですよ。
でも、もうここ(舞台)にきたら、あとはここしかないので、ここを信じ
てやるしかないですね。