「歌の世界をもっと豊かに拡げる方法」4.歌いたい曲のどこを聴くか

いま、そこの端っことここまでやったら何メートルくらいあるかなあ。
3、4メートルやん。どう
ならここやったら「いやあ、今日来てくれてありがとう。お! カッコええ
Tシャツ着てるやん、ええ?」って、このくらいで聞こえるやん。でもこれが
10キロ先、ゆうたら声とどきへんやん。
10キロやったら、、、、もうあきらめんのよね。
ところが200メートルくらい先やったら「おーーーーい!」とかいって一応
声出そうって努力するわけよ。

で、あそこにいるTシャツのカッコいい彼に歌うとうてください、言われたら
「え? 聞こえるかな。木霊してうまいこといったら」くらいのつもりやけど、
それやったら「このひーろーーーいのーはーらーい」とかってやるわけやん。
ね。でも届けよう! って思うからそれくらい大きな声も出すし、声にも伸び
がでるし、でもさっきのお座敷小唄やったら3メートル4メートルやったらそ
んなんうるそうて聴いてられないやん。だからそこやったら「このひろーい」
いうたって、そんなにひろうないから、こんな声になっちゃうわけやねん。
小さな声になっちゃう。
だから、人間って、イメージするだけで身体はある程度それに反応しようって
動くいうことなんです。

だから、ここがほんとに400メートルある競技場のトラックやったらもっと
大きな声ださなあかへんし、で、そこに長い競技場を埋め尽くすようなお花畑
があったとしたら、そこがなんか春めいてて、そういうひろーいところにお花
がいっぱいあって、そのお花をぜーんぶ持ってきてあなたにあげるよって、言
ってもらえたらうれしいやん? ねえ!
でも、あげれる人がいるのもうれしいわけですよ。
こーんなにたくさんお花あるのに誰にもあげんでええねんって、いうたらさ、
ちょっとさみしいわけやん。

で、そんな感じの広いところにいいてて、どっからともなく音が聞こえるよう
にイメージしてほしいんですよ。
そんときにはどの音を拾ったらええのかな、で、このときには森山良子さんは
・・・・・・・・・・・って、こういうベールの音をくれはった。
で、はあ、なるほど、って、けっこう楽しい歌やなあ、わくわくするねんなあ、
それでなんか愛らしいしかわいいなあ、って思いながら、またこんど歌うと、
そうするとさ、「このひろーい/野原いっぱい、咲くー花あーをー/ひーとーつー
残さずー/あなたーにーあーげるー」と、ちょっとこんどはかわいらしくなった
りする。ただ単に広いだけじゃない。

っていうふうに、音っていうのはもう書いてくれてる音はガンガン使いましょう
ってことやねんけど、描いてない音も自分でもしイメージできるんやったら、
たとえばこんなふうに半音ずらすだけでなんかちょっとドキドキ感がでてくるよ
うな、そんなアレンジも入れられるんですよ。
でもそれ入れたって怒られへんねん。

っていうふうに、音楽、曲、歌、それっていうのは、自分がどこを聴きたいか、
そこにあるドラマ、そこにあるほんとの自然、でもほんとになくたっていい、
自分で歌いたい何かっていうのは、どんどんちがうものを突っ込んでもいいし、
自分がイメージしてもいい、ただほんとに自分が聴きたい歌いたいものをイメ
ージしてったら、喉は勝手にそれに応じて、ひろーい声がだせるお喉になるし、
もしくはキュンてした、ちょっとかわいいっていうような声もだせるような、
喉になったりしながら、お客さんにくすぐり入れたり感動させたりできるよ、
という、そういう話なんです。

だからほんとに不思議なことで、広さ、高さ、深さ、幅広さ、そういうのも
どんどんイメージしてると、ほんとに声も大きくなるんよ。

そこの方、バンドかなんかやってはるのん?
えーとー、どんな曲を主にやってはるんですか?

> ポップス

OK! じゃあ、あなたがやりたいポップスっていうのは、どれくらいの箱で
やるイメージでふだんいつもやってる?
あの、だからもし自分のおうちで机の上にこんなんと、打ち込みだけの機械で
ちまちまこうやってたらさ、やっぱ音楽はちいさなんねんなあー
でさ、たとえばソーラン節ってあるやないですか。
はあーーーあーあーあー、みたいなね。民謡系の音。
なんであんな音が出んのかといったら、民謡ってさ、山んなかで木い切るとき
にうとうたりとか、田植えしながらやったりとか、それからひろーい海にでて
さ、魚とるときにうとうたりしはるわけですやん。ね、もう乗りよく仕事やらん
としんどうてやってられへんわけよ。
で、そういうときにさ、こう、せまーい小さい四畳半の海で魚なんか釣られへん
わけや。ね。ひろーいとこやから、ヤアーーーーレンって、デカい声だす、高い
声だす。だから喉も詰めてたら声でえへんから、スカーン!って喉も広がってきて
遠いところまで、少々波しぶきとかあっても声がみんなに聞こえるくらいの音に
なって、というふうになってくるわけなんですね。

だから、こんな歌つくろう、こんな曲つくろう、もちろん、それええんやけれども
いろいろ自分の頭でイメージするんでも、もう甲子園くらいの、野外のコンサート
でオレ歌うねん、て、なら野外コンサート向きのラブソングってどんなんやろう?
とかさ。また逆にさっき言ったすぐそばに来てほしいからあれやないけどさ、もう
ほんとにシングルベッドの上で彼女といちゃつきながら歌う歌ってさ、どんな歌に
しようかとかさ。
それぞれのときのイメージを持ちながらやりはるとね、そうすると喉も開発される
ねんなあ。

昔のオペラやってた人に華奢な人なんか絶対おらへん。
もうがーん!いうてでかい肺なんかもごっついお尻してぶいーん!いうようなオバ
ちゃんらとかおっちゃんらが「うお~~~!」とか歌うわけやんか。
じゃないと届けへんから。
か細い感じで「ウオ~」いうてても歌にならへんから。

だけれど、なんていうのかしら。こんなゴツイ人も最初からゴツかったわけじゃな
くて、いい音だそう、大きな音だそうと思って筋肉鍛えたてったり、そうやって歌
うからカロリーもいっぱい使ってガンガン食べるから太って、というのもあるんや
けど、でも必要な音にちかづくためにみなさん自分の身体も勝手に変えてやってった、
というのがあるわけなんですね。

だから最初にイメージするって、とっても大きいんです。
まずどんな歌が歌いたいのか。
どんな曲が歌いたいのか。
それもありなんですけれども、じゃあ、自分が歌いたいと思っているこの歌、何
イメージするのかということやのよね。
この譜面だけ追っかけてさ、テテテテ・・・ってオタマジャクシが動くのだけ見て
やってたって、絶対に音なんか湧いてけえへん。
だからそういうときにはやっぱりまず、譜面の前に歌詞を読む、

 この広い野原いっぱい 咲く花を
 ひとつ残らず あなたにあげる
 赤いリボンの花束にして

ってこれ、すごいいろっぽいお話ですやんか。ある意味。
すごいやさしい、というか、かわいらしい、というか。
それを自分の中に十分溜めて、こんなに誰かのことを大好きになって大好きになって
書いてる曲やから、じゃあ、その曲のどこを聴いたらいいのかなあって。

この書いてる人の声か。
それともこの花束をもらえるその人の声か。
それとも、この野原のお花いっこずつの声か。
みんなの声を聴きながら、自分でその世界をまとめたときに歌うと、それぞれの歌い
方ができるよ、そういうことなんですね。

で、そんな意識でこのハーモニーっていうのを知ってってほしいいんです。
でちょっとテクニック的なことですけれども、もし弾き語りができる、ギター弾きな
がら歌える人、ピアノ弾きながら歌える人っていうのは、まずメロディーラインは弾
かずに、このベースラインだけ弾きながら自分で歌う、っていうようなことをしてほ
しいんです。
そういうことでこのメロディーラインだけが持ってる、その歌の面だけじゃなくて、
伴奏のほうですね。だから意外と歌の勉強をするとき、伴奏の音を一生懸命勉強する
のはすごい役に立つんですよ。
歌の世界が広がるから。
で、その伴奏の音を何度も何度も聴きながら、ハミングでもいい、歌いながら、、、
それで自分の中に入れて、まあ複数の人がいたら他のメンバーにも歌ってもらったり
ハミングでもいいんです。そこに自分のメロディーラインを乗っけてって歌うとか。
そういうふうにすると、俄然、急にですけれども、その出してる音が変わるねん。