「今一度、腹から出す声のコントロール!」2.声帯ポリープを作らないために

もしも、もしもですよ。
わたしの頭をポコンってはずして首切ってここの声帯から出てる声だけで
発声したらどんな音になるか。
ンーンーンー・・・ってこんなブザーみたいな音がします。
こういうのを『喉頭原音』っていうんです。
まるでブザーみたいな音なんですけど、唇だの舌だのお鼻だのほっぺの下の
空洞だの、いろんなところで響かせて『音』、それも言語に使える音に
変えていくんですね。
で、そういうのをきれいに上手にやっていくにも、やっぱり基本は腹式呼吸
ってやつなんです。

いま、今日、こちらにお集まりのみなさんのなかで、歌を歌うのが好きだと
いう方は手をあげてくれますか?
うん。まあまあ大勢の方がいらっしゃいますね。
でも、声を出したことがないんです、って人がいましたら手をあげてくれます?
そんな人、誰もいません www
みなさん、声はお出しになる。
じゃあ、その声を出すときに、どうしたらラクに声が出るのか?
っていうことなんですけれども、ラクに声を出したいな、いい歌うたいたいな、
しょっちゅう声を出すということ。それは練習すれば出るようになるとみなさん
思われると思うんですが、間違った方法で練習すればするほど、声をだせば出すほど
みなさん喉がチリチリする、痛くなる、なんか喉がこそばゆくなる、くすぐったくなる、
というような、そういうような思いをされたことのある方、手をあげていただけます?
・・・これまた大勢の方がいらっしゃいます。

それ、どうしてかというと、さっきのこの紙の声帯のモデルで見ると、この声帯という
やつは間をいつも空気が通りますよね、声だすとき。「あー」っていうと。
じゃあ、空気が通ってるわけですから、よく言うじゃないですか。
今日はなんか声帯が合ってる感じがする、とか、合ってない感じがするとか。
あーーーって声がなんかスカンと出るときには声帯は合ってるんです。

でも声帯がほんとに合っちゃったら声は出ないんです。
エッ! ってなります。
声帯が合うということは声帯が閉じるいうことですから、エッ!ってなると声は
でません。
ちょっとやっぱりやわらかくして開いてやらなあかへん。
そのとき声帯がこうパタパタパタ…って揺れるからこう「あーー」って声が出るんです。
ところがね、いっしょうけんめい演習しましょう、高い声を出したいです、ってやると
喉がけっこう詰まって、このぶち当たってほしくない声帯が当たりすぎるんです。
当たりすぎたらどうなるのか?
声帯は粘膜です。
中に筋肉も入ってますけれども、やわらかい粘膜ですね。
その粘膜がしょっちゅうバカバカバカバカぶつかったらどうなる思います?

そう! こすれてケガする。
充血したりして。
ひどいときには、その声帯に走ってる血管がはぜて血豆なんかができる。
そういうのがポリープのできはじめですね。

そういうふうにはしたくない。
だから、いくら高い声を出すとしても喉を締めつけたくない。
高い声を出すとしても声帯をボンボンぶつけたくない。
そうならないようにしたいわけです。

さあ、じゃあ、これからみなさんと高い声を出す練習をしてみたいと思います。
まず最初は何も考えなくてけっこうです。
またもういっぺん、お喉もってもらえますか?
それで、「マーマーマーマーマーマーマーーーー」ってやってもらいます。
いきますよ。せーの。

マーマーマーマーマーマーマーマー

はい、もういっぺん。

マーマーマーマーマーマーマーマー

ですね。
マー、マー、マー、マー、マー、マー、マーってやるときに、声が上がると同時に
実は喉も上のほうに上がります。
で、音が下がると同時に喉も下がります。
これ、喉の一般的な性質なんです。

だから、もっとわかりやすくしようと思ったら喉に手をあてて、まーあ↑ って
やってみて。せーの!

まーあ↑

エホエホエホ・・・ってなるでしょ?
なりません?
ね。どうしてなるのか。

お顔のね、顎のあたりから首にかけてって、こんなんなってます。
前から見ますと喉頭。喉頭軟骨ってのがありますけれども、ここ気管で、こんな
形してここに入ってます。
いまみんなとやったように「まーあ↑」ってやっちゃいますと、喉が上にひゅん!って
上がります。
首の上と下、どっち広い?

ふつう下のが広いよね。
肩がついてますもん。
上のが狭いんですよ。
上のが広い人なんていません。
もしいたら、それ異常です。

上の方が狭いとこに喉がギュっと入ったら、喉はきゅっと縮まっちゃうんでうよ。
そうすると「まーあ!」ってやったときにギュって縮まるから、そこで感じる痒さ、
イガイガした感じ、喉の詰まった感じ、それがこの声帯がしっかりぶつかってギュ!と
なったときの感じです。

だからこの腹式呼吸をせずに高い音をガンガンガンガン出してるとどうなるかっていうと、
カンタンなことです。
お喉は声帯がいつもこすれあって、ダメージをうけてポリープとか結節つくりやすくなる。
そこまでいかなくても喉がヒリヒリするから歌うのが嫌になっちゃう。
そういうことになります。
じゃ、どうしたらいいでしょう?

ここで腹式呼吸が生きてくるんです。
その喉頭、声帯の入ってる喉頭が上に上がるとツライことが起きるという話をいましました。
じゃ、喉頭、上げないようにしたらいいんです。

この(首の)ゆったりした広いほうのところで喉頭がいつも動けるようにしてあげると
喉はラクになるんですね。

だからたとえば何も考えずに「マーマーマーマー・・・」と発声するとここらへんくらいで
詰まっちゃって声が出ない。
だけど、喉をがんばって下のほうに下げて下げて下から引っぱっとくようにしとくんですね、
引っぱりながら高い声を出そうとすると、「マーマーマーマーマーマー」ってもうちょっと
出しやすくなります。
それでいて(喉は)ガラガラ、ザラザラしなくなる。
でもねえ、(喉を)下のほうに引っぱとくって大変なんですよ。

この喉。上には上がりやすいけど、下には下がりにくいんです。
喉の筋肉、これ『外喉頭筋』って言うんですけれども、喉頭の外側についてるから外喉頭筋
っていいます。その喉を上のほうに引っ張る筋肉をぜんぶ入れると大体12対、24本、
右左に12個ずつで24本の筋肉で喉はいつも上に吊ろう吊ろうとされてます。
なんでか。
上に上がるときに例のさっきの喉頭蓋が上手に閉まるようにできてるんです。
そしたらもの食べるときにも実は唾のむときにも喉上がる、高い声出すときにも喉上がる、
喉上がるときには喉頭蓋って閉じやすくなっちゃう。
そうすると、閉じやすくなるので、食べものは入ってこない。
そのかわり、喉頭蓋閉じちゃったらどうなりますか?
声、ひょーんと出す。
音だそうと思うのにフタが閉まってくるんですよ。
なら、いい感じで声でません。
意味わかる?

お喉ってこんな形してます。
で、上にがるとペコン、ペコンってフタが閉まります。
ここから声でてるのにペコン、ペコンってなっちゃったら、声でなくなっちゃうんですよ。
だから喉を上のほうに上げずに、下のほうに下げて喉頭蓋を開けたままで声をラクに出す、
これが大切になってきます。

ところがこの喉頭、下に下げる筋肉はたったの2本。
上に吊るのは24本あるのに、下に下げるのは2本。
1対しかないんです。
ですから、これは訓練が必要、ってことです。

さあ、じゃあ、この喉頭を下のほうに引きずり下ろしたいんですけれども、
上手にやる方法はどういう方法があるでしょうか。

ここで腹式呼吸のほんとうの出番になってきます。

気管、そして肺があります。
そしてこの肺の真裏になるんですけれども、真裏というより真下かな。
ここに、横隔膜という筋肉板があります。
これ『膜』なんて漢字で書いてますけどぜんぜん膜じゃないです。
かなりガッツリしたしっかりした筋肉の板があります。
これがちょうど、こうもり傘のような感じ。
ガバっと傘を開いたような感じに、ドームみたいになってるのが横隔膜です。
これがちょうど肺の真下にあります。

肺を、よくふくらましてあげたほうが空気いっぱい溜まるから、声だすのに空気たくさん
使えてラクじゃないですか。
肺、広げよう~って、フーって息吸うときに、胸ひろげるのは胸式呼吸のスタイルです。
ところが、胸にいかずに腹式呼吸でいく、下のほうにどーん!と広げる。
ラーラー♪
音色は変わりますけどね、でもとにかくお腹をドーンと出してあげて、この横隔膜を
ベタっとこういうふうに下げてあげるんです。
そうすると、必然的にここにくっついてた肺も(下に引っぱられて)これだけ広がるの。
そうすると、肺はしっかり広がってたっぷり空気が入ってる、と同時に、なんと!
肺はこの下側だけがぶぅーんと広がるだけじゃなくて、、、(3につづく)