「ポップスって、なぜ売れる?」5.ポップスを合成する要素

ブルース、ゴスペル、ジャズ、それからカントリー。
とくにアメリカンポップスにはそういういろんな要素があります。

じゃあ、日本のほうはどうなのかっていうと、あれもやっぱり面白い
んですよ。
まず歌謡曲、演歌、それからニューミュージックなんていわれてる
ものの中にはアメリカのカントリーとかブルースとかからひっぱって
きた部分を混ぜてる、、、いまでいうと『ユーミン』って知ってる?
ユーミンって昔は『荒井由美』っていたんですけどね、松任谷さんと
結婚する前は。
彼女なんかはそのニューミュージックの騎手であったんですけれども、
彼女たちが世の中に出てきたときっていうのは、そういうアメリカの
音楽をしこたま入れて日本的な、アジア的な感性をとりまぜて、それ
で歌い出したんですね。
あのユーミンの歌い方っていうのはすごくおもしろくって、チベット
のほうに『ホーミー』っていう声の出し方があるんですよ。
ホーミーって何かっていうとね、声を「あー」ってださずに息を飲む
ような、喉鳴らし声っていうのかな、そういう発声があるんですよ。
ユーミンの声の響かせ方っていうのはアレにちょっと近いんですね。

で、あの音はチベットの広ーい草原で声を遠くまで飛ばして聞かせる
のに効果がある声なんですよ。
そやからそういうやりかたで「恋人はサンタクロース」ってやっては
ったんですね。

ポップソング、ポップ音楽、ポップミュージックというのをきっちり
勉強しようとすると、意外とクラッシックからやっていくほうがすごい
ポップシンガーとか、ポップミュージックメイカーになれるってこと
なんですね。
マドンナでもボンジョヴィでもスティービー・ワンダーでもそうなん
ですけれども、わたしも彼らの音楽の先生に習ってたことあるんです
けど、ハリウッドにいはるんですね。セス・リグスっておじさんです。
彼はもうほんとにベル・カント、クラシックばりばりで、そのしっかり
した発声法をそういうアメリカンスターたちに教えまくってたおじさん
です。

で、彼はいつも言ってました。
とにかく歌の基本はラテンになるからと、言うんで、もういつでも、
なんていうのかな、まぁ日本で言うとコールユーブンゲンみたいなのが
あるんですけれどもね。
そんなんばっかり基本的に教えて、とにかく音の鳴らし方っていうのを
徹底的にやってくれました。
そういうおじさんがいはりました。

アメリカのポップスターっていうのはそういう歌の、アメリカンポップス
のいろんなベースを勉強してくるんです。
それで、そういうものをぜんぶ自分の身体に入れて、で、ポップソングが
歌えるようになってるんですね。

で、いろんなものを学んだ最後に自分がフリーになって、楽ちんになった
ときに、喉に変な力を入れずにラクにぽかーんて歌えるようにすると、
そうすると、こんどはここにちょっと心理学も入ってきますが、

 自然な歌声は、自律神経が整った状態

これどういうことかといいますと、人間てね、攻撃しよう、これから
くぞ! やるぞ!っていったときには交感神経優位になるんですよ。
そういうときには喉はきゅ!って詰まり気味になります。
こんどは、「ああ、もう今日も1日終わりやわ~、もうのんびりしよ」
って欠伸しながら寝る前とか、お腹もいっぱいになって眠くなったとき
とか、そういうときには副交感神経が優位になります。

だから、この副交感神経が優位になりすぎますと、人はちょっとヘロヘロ
になりすぎます。
反対に交感神経が優位になるとカッとなって緊張しまくりになります。
このバランスがちょうどよくとれているときは、声を出すにしても喉に
余分な力がかからないから喉が詰まって咳きこんだりするようなことに
ならずに、ラクに「マーマーマーマーマーマーマー」って出せるように
なるんです。
つまり、喉が楽ちんだから、いっしょうけんめい歌の練習してても声帯が
ガリガリぶつかりあって声帯ポリープ作ったり結節を作ったりしないで
ラクに声が出せるんです。
で、この自然な音でもって歌を歌うと置くアクサンの心にスッと入ります。

で、この(自律神経の)バランスをとるために、その自然な声を探して
いきましょうってことなんですけれども、変に緊張しない、変にいいカッコ
しない、すごく自然で、自分がいまほんとに表にポンて、コロっと置くかの
ように出す、そういうような心理状態、それにはいちばんポップソングが
適しているんですね。
究極のコンテンポラリーソングですよね。
同時代、いまの時代、2017年ですね。
100年前とか1000年前ちゃうよって話。
まあ、時には数万年前に戻ってウッホウッホっていうようなすごくプリミ
ティブな、原子的な音が人の心を打つ時もありますけれども、ちょっと
7、800年くらいっていうと、変に昔の人の精神状態に持ってかなアカ
ンから、それはすごく難しかったりするねんね。

だからそういう意味でも、また心理学的に言っても、自然な歌声で自律神経
を整えて、喉に変な緊張状態をつくらずに、ラクにぽかんと歌うのは、いま
のいい感じのポップスソングを歌うってのにはすごく適してますよって、
そういう話です。

そんなわけでね、このポップソング、ポップミュージックというのは、一番
最初には神さまがいらっしゃったんですけれども、その次は政治が出てきーの
経済が出てきーの。
ね、みんなmずこの国を安定させなあかんから。王さまはいつまでも王さまで
いたいわけです。30年くらいたって自分の孫が一般平民になったら許されへ
んわけです。王さまの家はいつまでたっても王さまでいたいって思うわけですよ。
で、それからしばらくしたら、音楽は金になるなって思う人らは音楽で金儲け
したいってみんな思うわけですよ。経済と絡んでくるわけです。
でも、その途中途中で、これはヒットラーに限ったことだけではないんです
けれども、音楽を使って人を元気にするとか、いい感じで色っぽい気持ちに
させるとか、そういうような心理学的なところを狙ってった人はそういう一番
芸術的なところでこのポップソングを使ってったって、そんな話です。

だからポップソングっていうのがね、どうして売れて、いまの時代には民謡
とか演歌とかクラシックではなかなかこうスターになられへんのかっていうと
やっぱりすごくいまの時代からはズレちゃうからなんですね。

でも、さっきも言いましたように、いまのJポップでも、アメリカンポップでも
その中にはいろんなものが入ってるわけなんで、じゃあとりあえず民謡から
いってみよう、だって演歌の人ってごっつ歌上手やん? ねえ。
演歌きっちり歌いこんだ人がポップに入ってくると、すっごい目立つやん?
少なくとも上手さでは。
なぜか。
基本をきっちりやってるからなんです。

音楽界、芸能界っていってもいいかもしれません。
昔々、天地真理からこっちしばらくアイドルがいっぱい出てきた時代です。
ほんとに『アイドル時代』ってのがあったんですね。
いまやったら最後は早見優くらいですかねえ?

で、そのような人たちの時代はレコード、アルバムひとつ作るのにレコード
会社がすごくお金かけてくれはってん。
あのねえ、昭和30年代のLPって、わかる?
レコード。アナログレコード。黒いやつ。
あのLP、ロングプレイっていうのよね、それの省略でLPっていうんですよ。
あのLPというのは1枚、3、4000円しました。