「ボイスチェック、ソングチェック」Part 9 /1.浜千鳥

パワーボイスセミナー 第75回
「ボイスチェック、ソングチェック」 Part 9

野球選手にコーチが必要なように歌手にもコーチは必要です。
今回は歌うための筋肉の動かし方をチェックします。
腹式呼吸時のおなかの筋肉や横隔膜をどのように動かすのか、
肩を上げないように歌うにはどうすればよいか?
など喉をつぶさないようにして声を出す方法をお伝えします。

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はい、みなさん、どうもこんにちは!
今日はボイスチェック、ソングチェックです。

今年はこれやるのはじめてですけれども、ボイスチェック・ソング
チェックって何かというと、やっぱりこればっかりはそれぞれの人に
声を出してもらわないとなんともいえなんですけれども、
『声を出すコツ』っていうのがあるんですね。
で、それは頭でわかってても身体で体得してもらわなきゃだめと。

いっしょけんめいこういろんナビデオとかDVD、本を診てもらったり、
それから誰かが歌ってるの聞きに行ったりして、ふん、こんな感じか、
と思えども、人間の身体って、自分でこう動かしてるつもりが動いて
ないってことが山のようにありますね。

もしそれがほんとに思い通りに動いてるんであれば、これはもう野球
のコーチとか、短距離走のコーチとか、そんなコーチ業が存在しなく
なっちゃうんですね。
あれはどうしたら身体がラクに動くようになるのかというのをコーチが
選手に教えてくれるわけです。

じゃあ歌の、発声のコーチというのはいるのか? というとですね、
これ、いそうでいない。
で、いろんなところでもちろん、ボイストレーニングやってらっしゃる
方はいるんですけれども、そのボイストレーニングの基本的なことって
いうのはこれ国家試験もなんにもありませんから、人体模型といいます
かね、身体を解剖して人間の身体がどうなってるのか、ということを
ご存知のボイストレーナーっていうのは非常に少ないんですね。

それで、ある程度の大きな大学で声楽、音声学なんかを教えてるところ
ってのは耳鼻科の、声、喉の使い方をよく知ってらっしゃる先生方に
半分ボランティアみたいなものなんですけれども、お願いして来て
もらって生徒さんにおしえてもらう、ってのがここ数十年の流れでした。

声をだす、というときにどの筋肉をどういうふうに使うのか。
どの関節をどういうふうに使うのか。
それをちょっと知っていただくだけで、けっこう声がでやすくなる、
ということがありますので、今日はそれをみなさんと一緒にお勉強して
みたいと思います。

さあ、ではこっちへお越しになって。
ちょっとやってみて。

 Aさん『浜千鳥』を歌う

すごいですね!
大正9年の歌やそうです。

えーと、浜千鳥ですねー
これどうです?
浜千鳥、音高すぎません?

 いえ、低いです。
 自分には歌いにくい。
 もうちょっといつも高くして♯4つにしたりとかして。
 やってるんですけれども。
 
まだ高くするんすか。
へえー

 このミーとか、すごく出しずらいんです。
 苦手なんです。

あ、そんな苦手なん持ってきたんですか。

 苦手なので、教えてほしいんです。

あ、わかりました!
えーとね、まずね、あーおいー つきーよーのー
こんな感じ?
でね、まずごめんなさいね。
音の高さ低さは別として、えーとあの、なんていうのかなあ、、、
はっきりごめんね、キツイこと言うよ、わたしね。
音は出してはんねんけど、歌うてはらへんねん。

 ああ、はい。

っていうのは、なんか言うてへんねんけど、何言うてはんのか
さっぱりわからへんねん。
でね、これやったらすごくもったいないのね。

極端な話、歌って、なんてんでしょうか。もちろん、メロディーは
大切にする。リズムを大切にする。それはとても大切なんです。
だけれども、それ以上に大切なのはやっぱり「意味」やねんね!

これ、どういう歌ですか?
まず意味ちょっと教えてください。

 親を亡くした鳥が悲しい気持ちで、親を慕って歌ってる歌だと
 思ってるんですが、、、
 兄嫁が亡くなったので、その甥が悲しんでる姿をいつも想像しながら
 歌ってるんですけれども、たぶん発音が、日本語の発音って
 すごく難しいので、
 発音がへたくそだと思うんですよ。
 はっきり歌えてないのがわかるんです、自分でも。

ああ、いや、日本語の発音は簡単ですよ。
あの、要するにね、、、 ではまずはおかけください。
みんなで一緒に考えてみましょう。
あのー、みんな人の悪口なんか言われへんからあれなんだけど、
じゃ、なぜいまの歌が聴きにくかったのかってことを言いますね。

あのたしかにピッチはちょっと合ってないのかなあ~ってのはあるんですけど
まずピッチのことはおいときましょう。
みなさん、誰でもそうなんですけれども、歌うたうときに、
とにかくやっぱりいちばんみんなが歌わなあかんなあと思うのは
メロディーなんですね。
ところが意外とシャンソンとかラップとか、お囃子とかって
少々ピッチ、メロディがズレようが、まあ一応なんとか成り立つ、
でもなんで成り立ってるのかっていうと、ちゃんと語るんですね。

だからたとえ音はずして変になってしまっていたとしても

 あおいー つきよのー はまべにはー
 おやをー なくしてー なくとりがー    

と、わたしいまピッチもメロディーもリズムも度外視してやったんですが、
それでもなんとはなしに青い月夜に、浜辺には親を亡くした鳥がいるんやと
そういうのが伝わる。
それが先に入ってきたほうが、歌としてのドラマが
お客さんに見えやすくなります。

・・・ということで、この『浜千鳥』、まずご自身の心情などは置いといて
この歌詞の意味をふつうに伝えるような感じで朗読をしましょう。
歌詞を読んでみましょう。語ってみましょう。
だから「読む」というのもほんとはこっちの漢字じゃなくて「詠む」ほうですね。
ピッチ、メロデイー、リズムのことはぜんぶ度外視しましょう。
まずは後ろでBGMのごとく、わたしがメロディー弾きますから
それにあわせてまずはこの歌詞を詠んでみる。
それを人に伝える。
それをまずやってみましょう♪

 青い月夜の 浜辺には
 親を探して 鳴く鳥が
 波の国から 生まれでる
 濡れたつばさの 銀の色

そしたらね、こんどは何もやりません。
できるだけ自分でここらへんに、、青い月夜です、波辺です、そこに
1羽の鳥がやってくる、、、、
というような感じで、イメージをひろげて、まずは自分のイメージを
しっかり作って朗読してみてください。

 Aさん、ふたたび朗読する、、、