「パワーボイスってなんなんだ?」1.大きな声=パワーボイスじゃない!

パワーボイスセミナー 第72回

「パワーボイスってなんなんだ?」

腹式呼吸がどうして発声に役に立つのか大解説!!
最近、ある方に「パワーボイスって、大きな力強い声ってことですよね?」
と尋ねられ、あ、違う! この話はもう一度、しなくては! と考えました。
『パワーボイス』とはただ単に大声を出すということではなく、自分の伝えたい
ことを相手に伝え、適切なコミュニケーションを行うことでお互いの気持ちを
高めあい、身も心も元気になる、という声のことです。
その際、用いる呼吸法は腹式呼吸。
しかし、単にお腹だけ意識すればいいという腹式呼吸ではありません。
頭、口、顎、首、肩、胸、背中、そして丹田を中心とする、腹。
さらに足腰に至る身体全体を意識するなかでの横隔膜を中心とする腹式呼吸の
おさらいを今回はしようと思います!

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どうもみなさん、こんにちは!
大北メディカルクリニックの松永敦です。
今日は、パワーボイスってなんなんだろう? ということについて
お話しさせていただこうと思います。

端的に言ってデカイ声っていうのはビックボイスなんですね。
『ヒュージボイス』なんても言います。
でも、パワーがある、力がある、じゃあ、何に対して力があるのかな? って
いう声なんですけれども、これはもうはっきりいいますと『伝わる力』です。
もしくは、『伝える力』。

何を伝えるのか、何を伝えたいのか?
それはもう千差万別ですね。
「好きだよ!」とか、「はよ金返せ!」とか、まあとにかく何か伝えなきゃな
らないことを伝える。
お客さんに「いらっしゃい!」、患者さんに「だいじょぶですか?」
「みんな元気?」
・・・・・・
とにかく人間はそういったことを伝えるために声を使ってるんですよね?

ところがね、笑顔で「いらっしゃませ!」と言ってても、それがお客さんに向か
って言ってるんじゃなくて、お客さんの財布の中身に言ってるみたいな「いらっ
しゃいませ」を言ってる店員さんも多いと思います。
でも世の中いろんなところで忙しくなって余裕もなくなる、バブル崩壊以降は
ずんずん右肩下がりでいいこと何もないわと、経営者のみなさんもヒイヒイいい
ながらいろんな方に働いていただいてがんばってる、というようなそういう時代
で、いろんなことを効率化してやらないとならない、ということになりますと、
なかなかに本音を言ってるとやってられへんがな、というような方々はたくさん
いらっしゃると思うんです。
そうすると勢い、とりあえず今を取り繕う、とりあえず「いらっしゃいませ」を
言っとく、っていう感じで、言葉を軽く発することが増えてしまって、それで
ほんとうに伝えたいことが伝わらなくなってしまう。
っていうようなことがいっぱいあります。

だからいまでも『懐メロ』なんていいまして、懐かしのメロディー、石原裕次郎
さんだとか、江利チエミさん、どれだけの方が知ってらっしゃるかわかりません
けれども、そういうような昔のすごく歌の上手な方の歌が未だに特集を組むと売
れるとか、CDの再リリースなんかでもそれなりの数が出るっていうと、これ絶対に
どうしてかな?! ということになるんだろうけど、そこにはたしかに昔風では
ありますけれども昔のメロディー、昔の言葉であっても伝える力があったから。
いい声の人はただ単に声が美しい、というだけではなくて伝える何かを持ってらっ
しゃる、要するにパワーボイスを使ってらっしゃるからこその作品だった、という
ことがいえると思うんですね。

ここに、わたしがいます。
みなさんがいらっしゃいます。
ここに誰かまた別の人がいます。
この誰かにわたしが声をかけたとします。
「やあ、こんにちは!」
「あ、はい! じゃ、また!」
で終わってしまうんですね www
でも、何かしら一生懸命、声かける
っていったときに、ただデカイ声をだしたらどうか?

たとえば、工事現場の騒音の脇を通り過ぎるとき、駅のホームで電車が轟音をた
てて行きすぎるのを待っているとき、そこで鳴っている大きな音を聞こうと思う
人はあんまりいないんですね。
どうしてか?

音って不思議なんです。
人間の耳ってね、何かしら伝えたい、伝えてほしい、というような意識のある音っ
てのは耳が(勝手に)キャッチするようになってるんです。
ところがそういう意識のない、単なる大きな音は素通りしてくれるんです。
それでもその音があんまり大きかったら耳やられます。
鼓膜の内側にある内耳ってところがやられてしまいます。

でも、小さな声でも「ちょっと聞いてくれる?」って言われると、思わずひゅっと
そっちに耳がいったりする。わあーってすごくいろんな雑音があったり、うるさい
会場で一生懸命デカい声でしゃべっててもなかなか誰も聞いてくれない。
でも、そんなに大きな声じゃなくても手をたたいて「みなさん、ちょっとお願い、
聞いてくれませんか?」といったら、ほんとに聞いてほしいと思ってたら、ひゅっ
とみんなの耳が集まる。

そういうような光景って、みなさんのこれまでの人生の中でも感じていただいたこ
とあると思うんですけども、ビッグボイスじゃない、ラウドボイスじゃない、ノイ
ジーボイスでもない、ほんとうに何か伝えたいパワーボイスがあったときに初めて
「えッ?」って耳ダンボになってハートに何かが届く、ってわけなんですね。

これ、意思が必要です。
素直な意思が必要です。

何かをぴょいって投げる。
ハイ! って、ぽんと受けとめる。
でもそのぴょいって投げるときに「あ、この人とつきあったらお火炎もらえるかな?」
「この人とつきあったらいい思いできるかな?」「この人とつきあったら後で、、、、
エヘヘ!」なんて思ってるとピュアじゃなくなってきて、伝えようとするものがブレ
てくるんですね。
そうするとこれまたたどり着きにくくなったりするんですね。

だからピュアな、というと、純粋じゃないとだめなのかってことになるので言い方を
変えます。
ストレートな、って言い方をしてもいいです。
もう、そのこと100パーセント! って言ってもいいかもしれません。

すなわち「好きだよ」と言ったときには、あなたのおうちの大きさが好きなのか、銀
行の預金残高が好きなのか、それともその人の心根が好きなのか、お顔が好きなのか
何か好きなのかわからないけれども、とにかく好きで今日デートしてほしい、とにかく
今日一緒にいてほしい、、、そういうことをはっきりすると、相手に伝わりやすくなり
ます。

さ、ここで、このひと(男)、何か知らないけど一応パッパパッパ出してますよね?
では、出すための秘訣。
出したいものが何かわからないと出せない、ってのがあります。

どういうことか?

あの子に何か伝えたい。なんでか知らへんけどあの子と一緒にいたい。あの子のお料理
おいしいしな、あの子の横にいるとうれしいしな、、、みたいな。
その人の風情といいますか、そのひとの優しさとか、そのひとの愛らしさとか、それが
とても心地よいエネルギーを発してるからその人といると自分もしあわせになれる。
だけれども、もしもその人が特に自分にいい感情を発してくださってるんだったらなお
かつ、きっと自分もいい感じが出せるんではないかなと思って、それを一緒に享受したい、
一緒にふたりで楽しみたい、、、
というところまでもし彼がわかっていたら、それに対して素直に
「一緒にいるとなんか知らへんけど楽しいねん。そやから今日の夜、よかったら一緒に
ごはんでも食べに行けへん?」って言えると思うんです。
そしたら意外とスッと伝わるんですね。
別にデカイ声じゃなくてもいいんです。
それ、パワーボイスになります。

だから『パワーボイス』っていうものを発するために、パワーボイスっていうのを出す
ために、まず自分が何が言いたいのかってことがわからないと全然パワーボイスになり
えないんです。