「いい歌を歌う秘訣、教えます。」3.人はあなたが感じていることに1番感動する!

Aさんはそこらへんの音楽の基礎的な練習はしてはらへんからさ、最初の歌は
ごめんなさい、あんまり歌にはなってなかってん。

あ、そうですか。
自分ではふつうに歌ってるつもりでおったんですが、、、

うん、でもピッチはガタガタ。
で、リズムはちょいズレ。

それはやっぱりここの意識が森進一をマネる、ってことに一生懸命になってる
ので、自分の歌にならないので、いろんなところからちょっとずつズレちゃう
んです。

歌をほんとに上手に歌うためには、まずこれ(歌詞を咀嚼して自分の中に取り
込むこと)があるんやよ、ってことです。

みんなに聞いてみたいと思うんです。
Sさんが勇気を持って最初に歌っていただいた。
その次は歌詞を読んでいただいた。
で、その次にはみんなでこれを検討してもう一度読んでいただいた。
ビフォア・アフターでどんなふうに変わったか、多少なりとも何か感じられます?

最後に読んでくださったのがいちばん感情がこもってたように思いますけど。
すごくいいお声だなと思って、、、

うん、そうですね。
Tさん、どう思われます?

後から読んでくださったほうが、自分の伝えたいことを隠しながらというか
秘めたる情熱みたいなものを感じました。

なるほど。
Tさん、どうでしょう?

最後に朗読してたほうがしっかりお腹から声が出ていて気持ちが入っている
ように感じました。

うん、、、はい。
Yさん、どうですか?

なんかご本人が、もどかしさを感じてるっておっしゃったんですけど、そう感じ
てるんだけど、まだうまく伝えきれなかったのかな、っていう感じがしました。

うん。なるほど。
Hさん、どうですか?

最後に読んでいただいたほうが、なんか情景が浮かびました。

うんうん、、、
わたしもみなさんがおっしゃったように、やっぱり後の朗読のほうは少なくとも
自分の気持ちってのがそこに入ってきてるんですね。
自分の気持ちが入ってくるからこそ、ま、極端な話、最初の森進一のコピーを
しようって歌より、単なる朗読でも最後の朗読のほうが面白いっていうのかな、
興味深いっていうのかな。あれ、じゃあ次もうちょっと読んでよ、って気になる。
でも最初の歌やったら、ちょっと待って、、、Sさんの歌聞くのはエエんやけど
森さんの歌のコピーはええわー、てな感じになっちゃう。
だから朗読だったらもう少し聞いてみたいなという気分にもなるんですけれども
それがほんとに人のマネをどれだけ、ってことになると、、、

あの、よくモノマネ歌謡合戦みたいなモノマネを競う番組あるじゃないですか。
あのモノマネもオリジナルの人の歌をすごくうまくやって、それやったらもう
優勝できるのかというとちょっとそうじゃなくて、最初にオリジナルで歌ってる
人、演じてる人のどこかだけをすごくカリカチュアライズっていうのかな、
一部分だけをデフォルメしてみせて面白く演じたり、その強弱を逆に強く見せたり
することでモノマネっていうのは面白い、楽しい、ひとつの芸になってますよね。
でも100%きっちり歌ったらみんな「はあー!」って感嘆してくれる、びっくり
してくれる、「いいなあ!」って言ってくれるけれども、でもそれが単なるモノマネ
だけだと意外とそんなにウケなかったりしますよね。

それは何故かっていうと、最終的にはモノマネの中にでも自分の味っていうのを
上手に入れていかないと、なかなか人っていうのは面白いと思ってみてくれないから
なんです。

最初に話したカラオケ歌合戦の話があります。
カラオケ歌合戦で、どれだけピッチを合わせて、リズムやハーモニーを合わせようと、
100%のコピーに近づけただけだったら人は飽きるんですね。
似せよう似せようってやってるとやっぱりいちばん大切な自分ってのが出てこないと、
歌とか演技とかそういう芸っていうのは、死んじゃうんです。
命が入ってこなくなってぜんぜん面白くなくなってくる。

人はみんな感動したくってこういうものに触れようとします。
でも一番に感動させてくれるのは、その人がどう感じてるかってことなんです。
だからその感じようといったときに、他人のコピー、っていうのだったらほとんど
感じることがなくなっちゃう。

お伝えになる、歌ってみる、朗読する、といったときに、まず自分だったらどう感じて
どう思うのかなあってことが大切だ、っていう、そんなお話です。

さあ、そんなわけで、もう十分に種明かしをしてしまったから、次はビフォア・アフター
でくらべるんじゃなくて、いまのことを感じていただきながらやってみましょうって
ことなんですが、まず、わたしが最初にこれ読まさせていただきますね。
まず読むだけです。

Dr.松永 『いのちの歌』の歌詞をただ読む

・・・と、こういう歌なんですね。
旬のところを持ってきはりましたね。
ハイ、それでは鼻歌でけっこうです。
ちょっと歌ってみてください。

Bさん、歌う

はい! ありがとうございました。
ということでこの『いのちの歌』ですね。
この歌詞から、歌から、どんなことを感じられるか、またさっきとおんなじです。
2ワードとか3ワードでけっこうですので、みなさんがどんなことをイメージされた
のかをちょっと教えてください。
いいですか?

自己肯定
思い出、喜び
暖かさ
よき伴侶の存在の重要性
命のありがたさ

では、お歌を歌ってくださったYさん、どうでしょう?

感謝の気持ち、ぬくもり

さあ、でね、わたしはどんなふうに思ったのかっていうと、生きるっていうこと、
これまた人生なんですけど、あと『ご縁』っていう言葉をこの歌を聞いてて感じさせて
もらいました。

こんなたりのことでいろいろ思い出してて、うれしくなるなあ、あったかい気持ちに
なるなあ、、、うんうん、自分は間違ってなかった、だいじょうぶ。みたいな、、
そういうような感じのことがこの歌の中には入ってるんじゃなかろうか、
なので『いのちの歌』ってうやつなんでしょうね。

えーと、この歌はやはりご自身のお耳で聴いて、それで歌を歌ったりされるんですか?
それとも何か楽器を弾きながら歌ったりされるんですか?

意外と人間ってね、上手に歌を歌おうと思えば思うほどに譜面に引っぱられちゃうん
ですね。
どういうことかっていうと、譜面に自分の歌の世界が潰されちゃうんです。
ある意味。

言葉だけで読むんだったらこんな風に、、、、
お芝居的にやるとこんなふうになるのかもしれませんが、でもまあある程度、言葉の
中にある言霊といいますか、その言葉が刺激してくれる感情の起伏っていうやつ、
それが、まあ日本人ですから、日本語読んでれば勝手に出てくるんですね。

ところがそこに、大きなお口をあけて、しっかり声をだして、それで譜面通りに
ピッチをずらさずにやろう~ なんて思ってると、いまの歌詞の、日本語の、言葉の
持ってる世界がぜんぶ崩れはじめます。