「歌う時の自分の声のイメージってどうするの?」5.歌詞に心を乗せるには

質問2:
気持ち、心を歌にのせる方法っていうのはあるのでしょうか?
いま歌っている曲が難しいので、なかなか感情を出すことが難しいんです。そう先生に尋ねたところ「自分の好きなように歌ったらいい」とおっしゃるんですが。

Dr.松永:
まず、その曲の日本語の歌詞はおわかりですか?
その歌詞の内容をふつうに喋ることできます?
恥ずかしいでしょ? 恥ずかしいですよね。
つまり、要するに、その歌はご自身の歌じゃないからです。
歌の世界って実は、しょせん歌、しょせん音のつながり、ではあるんですけれども、でもその歌の中には、その歌を作られた、もしくは歌ってらっしゃる方の人生のドラマがのっかってくるわけです。
歌にその人のドラマが入っていたら人の心を打つんですけれどもただそれを真似して歌うだけじゃ、まるで他人の借り物の服を着たみたいなことになってしまう。
だから、そのためには練習というものが必要になるわけですが、そういった恋の歌の場合はご自身の経験を思いだして、もしそれも無理だったら自分の好きな、思わず胸がキュンとするような映画を借りてきて見る、というのもいいと思います。そして気分が盛り上がってきたらその、越路吹雪さんですか? の曲を聞くんです。映画見ながら音楽聴きながら、自分の中にもっとたくさんの刺激を入れるんですよ。
だから逆にいうと、いい歌をたくさん聴いて、いい歌を一生懸命歌いこんでいったら、自分と違う世界の話でもだんだん近づいてきてくれる、そしたら色っぽいいい女になれんねん、というところです。
人間のイメージって、そういうもんです。
だから、自分なんて歳だし、とか、自分なんて下手だし、とか、自分なんてかっこよくないし、と思った瞬間に負け。
世の中を見たら絶世の美女や絶世の美男子だけがモテてるわけじゃありません。
でも人前でエエカッコしよう、よく思われようとすることのほうが1番カッコ悪いです。
それよりは、見た目がどうあれ、ちゃんと自分の伝えたいところを表現しきることのほうが大事。

日本人は欧米人にくらべて奥手です。
『あなたの燃える手でわたしを抱きしめて』なんてすごい恋愛はわたしたちの日常にようようあるもんじゃない。
だからその非日常の歌詞の世界になかなか入っていけないというのもしかたのないことですが、でもそこはイメージ力です。
わたしはよく歌詞を朗読することをみなさんにおすすめしていますが、その歌詞の世界が自分の中で当たり前になるまで自分にたたきこむんです。
そうやって自分に叩きこんだ歌詞を本気で歌えば、あなたの世界ができますよ。あなたの世界がきっと輝きだします。