「ミュージカルの歌い方、オペラの歌い方」2.1番うまい人のバイブレーションに乗っかる♪

場のコントロール、空間のコントロールが上手にできるとすごくいい舞台になるわけですけれども、それを1人で操れるのはあくまで自分ひとりでやる場合です。
複数の人間で舞台に立つときには、やはりほかの出演者とのバランスが何よりも大事です。
たとえみんながそれぞれ違う動きをしていても、みんながひとつのステージ上で同じ意識を持って動いている、というのじゃないと、見ている側は見るにしても聴くにしてもツライです。

お笑いの世界ではよく『スベる』なんていう言い方をしますが、スベるとはどういうことかというと、要するに舞台の空間がうまくひとつのエネルギーで回ってないことをいいます。
バランスが悪い。噛みあわない。
それをうまくやろうと思ったら、それにはやっぱりめちゃくちゃ練習することが必要になります。あらかじめ連携プレーをきっちりやったうえで演じないと、ただゴチャゴチャしているばかりで見ているほうは疲れてしまう。

ですから上手な人が下手な人に合せる必要はないんですけれどもお芝居を見てるとすごくよくわかるのは、10人のうち8人上手な人がいても、2人下手な人がいるだけで、その下手な2人に舞台のエネルギーが引きずられてしまうんですね。

そういうとき、どうやったらいいかというと、上手な人8人一生懸命がんばってるときに、下手な人もがんばらなきゃアカンねんけど、でもヘンにがんばったらアカンです。
そういうとき脇役の人は、ただ静かにやる、というのも手なんです。なるべく自分の色を出さない。
自分を出さずに演じる(歌う)ってどうやるんですか?
といったら、もうとにかく相手の台詞まわし、相手の身体の身のこなしに、そのまんま乗ってく、というやり方です。
相手の出しているバイブレーションを壊すことなく逆らわずに、ただ素直に乗っかってゆくんです。

簡単な動作でやってみるとこんな感じです。
2人の人間のうち、どちらかが抗えばぎくしゃくした動きになってしまいますが、相手の動きにゆだねてしまえばラクに動きが合ってきます。そしてだんだん楽しくなってくる。
これ、すごく抽象的な話なんですが、やっている人と、それを受けている人の関係、この関係がバラバラになるのは、互いにてんでばらばらな動きをしようっていうとき。相手の動きにゆだねて合わせると、ひとつのリズムにおいて二人がおんなじ感じでおなじようにエネルギーが出せる。そうすると回りますやん。
そういう感じなんです。

だから、お芝居、オペラ、ミュージカル、誰か上手な人が1人いたら、とにかくその人に乗っかっていく。
その人の真似をするんでもいい、1番そこで頑張れる人、上手な人、その人とおなじようなことをやるようなことだけ努力して、あとは静かにして。

そして脇じゃなく自分にもスポットライトが当たったときには、1番上手な人と一緒に、おなじバイブレーションで乗っていくと、舞台に流れるエネルギーを壊すことなく上手にやれる。
それは歌にしても演技にしてもおなじことです。
これを練習のときに徹底的にやっておいて舞台に上がる。

そしてミュージカルやオペラの練習をするときというのは、大きく分けて2つの練習が必要です。
これは絶対に2つ! どっちが欠けてもだめ!
身内で、出演者だけの練習は当然するとして、その身内でやっている練習をお客さんに見せること、こっちの練習も実はすごく必要です。これを手を抜くと、うまいこといきません。
これはゲネプロでやるとか、通し稽古でやることです。
やってる側と見る側。
どっちも本気でやらないとお芝居って面白くなりませんから。