パワーボイスをはじめよう!

声が与える安心感

以前、私の患者さんにこんな方がいらっしゃいました。
仮にTさんとしましょう。
私はその日Tさんに、数日後に行う手術の内容について、かなり丁寧に一生懸命説明し、Tさんもきちんと聴いてくださったようでした。

ところが翌日、Tさんの病室に行って「手術のことはあんまり気にしなくていいですよ!」と励ますつもりで言ったところ、Tさんは私の顔を見て、とぼけた口調で「ところで、どんな手術でしたっけ?」と聞き返すではありませんか。
私は(あんなに一生懸命に説明したのに!)と思って、内心がっかりしてしまいました。

後になってTさんにそのことを聞いてみると、Tさんは「先生が一生懸命に説明してくれているのはよくわかったし、とても嬉しかったのですが、内容はよくわかりませんでした」と正直におっしゃいました。
つまりTさんは、手術の内容はよくわからなかったものの、私の一生懸命さに満足して、なんの不安も感じなかったので、「まあ、この先生ならなんとかうまくやってくれるだろう」と
思って安心してしまった、というのです。

こういう患者さんの信頼は医者にとって本当にありがたいものですが、以来、以前にも増して患者さんが手術の内容を本当に理解してくれたかどうかを私が確認するようになったのは、いうまでもありません。

声の力というのは本当に大きなものだと、日々の診療のなかでもつくづく感じています。
患者と医者のあいだでもっとも大切なのは信頼関係です。
この話は、その信頼関係を築くのに声がとても大きな役割を果たしている、という、ひとつの例になるかもしれませんね。